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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/01/11 06:50  | 昨日の出来事から |  コメント(2)

不愉快なことが多すぎる日本(菅政権は「墓泥棒?!」 )


年末年始に日本に帰ってきて、目の前で起こる出来事に不愉快なことがやたら多いので、 今日は、かつての「ボヤキ漫才」ではありませんが、その中から特に二つの事についてボヤキまくってみたいと思いますので、どうかお付き合いください。

まあ、皆さん、何が不愉快と言えば、「年末年始の恒例の2011年の予想」が、まず、気に食わない。 どうしてかと言いますと、これは、何も日本に限らず、世界中、どこでも毎年恒例の様にされていますが、特に、巷の「日本の2011年の予想」は特に気に入らない。 だって、こうですよ、「2011年の景気予想は、以下の通りです。 (1)右肩上がり、(2)右肩下がり、(3)V字型、(4)逆V字型、と4つのパターンに分け、挙句に、それぞれのパターンを正当化するようなファンダメンタルズやシナリオを書きならべている“だけ”なのです。 これって「2011年の予想ですか?!」 。 予想とは、これらの4つのパターンから、その出版社の見識と責任において「どのパターンが最も蓋然性が高いかを示すことこそ予想ではないですか?!」。 これじゃあ、ファミレスのメニューを見ながら「好きな食べ物を選んでください!」と何ら変わりません。 これでは予想する事を読者の判断に任せて、自らの見識を世に問う事を放棄してしまっているのです。 これが、大手金融専門出版社の「2011年の日本の景気予測」ですよ! しかも、年末年始になると、四柱推命や星占いの先生方は「当たる、当たらない」は別にして予想する事を生業とされていらっしゃるので仕方ないとしても、経済学者からタレントに至るまで猫も杓子も「2011年の景気予想」と称して、あれこれ、あることない事を並び立てて紙面を賑わせていますが、 毎日、為替や日経平均の“予想を”している「私」としては、 「あ〜、自分もこうした類の人と同じ扱いを受けてしまうのかなあ〜?」と憮然とし、暗澹たる気持ちになるのでした。 正直、私にとりまして、年末年始は、1年で最も不愉快な季節でもあります。

更に、最近、特に不愉快な話は、もう政治については言いたくないのですが、それでも言わざるを得ないのが「死人から税金を巻き上げる墓泥棒まがいの相続税の改正」についてです。 やってくれるではありませんか。 今回の相続税の改正で、基礎控除5000万円を3000万円に、そして一人当たりの基礎控除1000万円を600万円にする税制改正案が、何の公の議論もなしに決まってしまいました。 しかも、カネと政治の政争に明け暮れる年末のドサクサまぎれに。

「消費税をあげる」と言えば、有権者から「NO」と言われて、選挙で惨敗するので、「死人に口なし」、しかも「死んでいるので選挙の有権者ではない」とくれば、これほど税金の取りやすい世代(というか仏様)はありません。 実にいいところに目をつけたものです。 誰も反対しないのですから。否、反対したくても死んでいるから文句が言えない! こんなことを言うと読者の皆様は 「そんなに相続税が心配だったら、生きている間に何とかすれいいだろう?」と思われるかもしれませんが、かなり年老いた人に、節税や相続税のややこしい話など、面倒くさくてどうでもいいというか、そこまでもう頭が回らないというか、、、。 私は、菅政権のこれまでのどうしようもない政策の数々の中で、今回の相続税の改正は「最も有効かつ、最も不愉快な政策」だと考えています。

有効な理由は、今の税制では先程も述べましたが基礎控除が大きくて、相続税を払う人は、その年の相続者数全体の4%程度で、その金額は2〜3兆円程度に留まっています(所得税全体の5%程度)。 ところで、今、65歳以上の一人当たりの平均資産(金融資産と土地等の不動産も含む)は4500万円程度あり、今回の相続税の改正に拠って、平均よりも多く持っている人が死んだ場合には、かなりのケースで相続税を支払う対象となる可能性があるのです。 今回の相続税の改正の背景には、財源不足を補うべく財務省の官僚に拠って相続税倍増計画を狙った節があり、平均的な相続人(寡婦もしくは寡夫とその平均的な子供2人)とすれば、基礎控除3000万円+600万 X 3 (一人当たりの控除(600万)に対して相続する人が3人)を想定し、先程も述べましたが、平均以上資産を持って亡くなられた方のかなりのケースで、相続税の支払い義務が発生します。 しかも、現在、65歳以上の方が保有している金融資産は400兆円あると言われており(日本の金融資産1500兆円の約27%を占めています)、これに土地等の不動産まで含めると、今回の相続税の改正で、税収は少なくとも2倍以上に飛躍的に増加する可能性があるのです(何故ならば、これまでギリギリで相続税を払わなくて済んだケースが、この改正で、相当のケースで該当してきます。事実、私事で恐縮ですが、昨年、亡くなった私の親のケースでも、今の税制では、相続税はゼロで済みましたが、今回の税制改正を当てはめれば、相続税が発生します!普通のサラリーマンであったにもかかわらず!)。つまり、今回の相続税の改正は、これまでの「金持ちからの相続税を取る」政策から、今後は「普通のサラリーマン家庭からも相続税を取る」政策に大きな政策転換が行われているのです! 皆さん、お気づきでしたでしょうか?!

また、現在、日本で相続する人の平均年齢は67歳と、既に年金をもらう高齢者なのです! 世間では高齢者に滞留した相続資金が、再び高齢者に相続されたのでは、経済の活性化につながらないと言われますが、財務省でソロバンをはじく役人にすれば、「シメシメ、また、平均寿命までの20年以内に、もう一回、相続税が取れるゾ!」と、笑いが止まらないに違いありません。

これを国の税収全体から見てみますと、現在の相続税2〜3兆円が、5〜7兆円近くまで税収が増える可能性があり、消費税を5%から10%に引き上げても増収効果は2兆円ですので、今回の相続税改正が、実は、消費税の引き上げ以上にインパクトのある話なのです。 にもかかわらず、こんな大きな税の改正議論(所得の分配と使い道の議論)が、財務省のえげつない官僚に拠って、さりげなく法案が出され、いまや官僚のマリオネットと化した現政権は、只管、身内の政治とカネに絡んだ政争に明け暮れ、このような重要な税改正を、その根拠となる説明も、公の場での議論も何ら一つなく、いとも簡単に決定してしまうもどかしさに、私は、正直、歯ぎしりをして身悶えしたのでした(根拠を説明し、公の議論をすれば紛糾する事は明白だから)。

しかも、最近では、世代間不均衡が取りざたされ、老高若低(同老人が金持ちで、若者が貧乏)とか、年金の負担を巡って、老人は「年金の貰い得をし、ゴネ得をしている!」、更に「政治家も有権者数で多数を占める老人に、にじり寄る政治ばかりしている」等など言われています。 更に、追い打ちをかけるかのように、ここに来て、藻谷 浩介氏の「デフレの正体」にもあるように、社会保障の分担の在り方を、今の働く世代が負担するのではなくて、同年代間の負担を提唱して(そのこと自体は一つの解決策として十分説得力があると思いますが)、間接的にやんわりと高齢者の「貰い得」を諌め、そして、やはり高齢者世代が働く世代を食い物にしているかのように書かれている事も、実に不愉快です。

私に言わせれば、「いつ、どの時代に、親が子供を食い物にしましたか?!」
子供の行く末をいつも心配し、幸せな人生を送ってほしいと願い、自分の暮らしを始末してでも(悲しいかな、せっせと貯金をして)、「子供の世話になるまい、少しでも負担をかけまい」と、質素に暮らしているのが、私達の親であり、私達ではありませんか?!

そして、このままでは、今回の菅政権の相続税改正は、死者の墓場を掘り返して、お供え物の装飾品を分捕る墓泥棒と何ら変わりません。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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2 comments on “不愉快なことが多すぎる日本(菅政権は「墓泥棒?!」 )
  1. あっちー&こっちー より
    偶然かな?

    伊達直人寄付フィーバー。どっかで相続税制変更と関係あると思う。馬鹿馬鹿しい、やってられるか! こんな奴らにむしり取られるんなら、オレが、ワタシが、自分で好きなように、世の中、人様、子供達に使うぜ、使うわよ! 伊達直人はそんなことは言わないので、ワタクシが代弁いたしました…。

  2. あっちー&こっちー より
    これだけは確信。

    財務省を代弁する政治家は無くならないだろう。必ず居るだろう。それが自身の生存条件だから。

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