2009/12/12 14:48 | 昨日の出来事から | コメント(2)
ソブリン(中央政府が発行する債券)が「安全」を意味しなくなる時
先週号の英経済雑誌エコノミストに掲題の記事を興味深く読みましたのでご紹介します。
主な内容は以下の通り。
(1)11月末のドバイショックは、ひとまず落ち着きを見せ始めたが、これで終わりかと言えばそうでない。今後は、これを契機にドバイ以外の国、特にヨーロッパやその周辺の国々の債務問題として懸念が高まりそうである(アイスランド、ギリシア、スペイン、ハンガリー、ラトビア、ギリシアなど)。
(2)そもそも、今回デフォルトが話題になったドバイワールドは、テクニカル的にはドバイ政府の保証が入っていたわけではない。 しかし、投資家はドバイ政府が保証しているものと考えて投資をし(また、広くそう認識されていた)、こうした乏しい厳格さが今回の問題をより大きくした要因の一つとなっている。
(3)2007年時点では、G20の国々の平均債務比率はGDPの80%で、発展途上国の債務の2倍程度でしたが、2008年の世界金融恐慌に対応すべく巨額の財政出動をした為、2014年にはGDP比120%に膨れ上がり、発展途上国のそれの3倍以上に膨れ上がる。 (発展途上国の面倒を見る余裕がますますなくなすことを意味します)。
(4)更に忘れてはいけないのは、国だけでなく地方の財政赤字の問題があり、特にアメリカの多くの地方は財政赤字問題に直面している。
以上のように、これまでは安全と思っていたそれぞれの国や地方の債務問題は、今回のドバイショックのような形で、今後、いつ問題が表面化するかわからない状態になりつつあります。
雑誌エコノミストは、こうした懸念のある中央政府はどうするべきかを提案しています。 それは、
(1)まず財務状態を透明にすること(不正、隠れ借金、隠れ債務をはっきりすること)
(2)次に、中長期的な政府の倹約(財政再建)の道筋を明確にすること。これは、今、行っている景気刺激策を途中で放棄することを意味しているのではなく、景気回復後に、債務をどのように減らしていくかを信頼できる形で示す。
以上が、雑誌のコメントですが、しかし、こうしたことは、わざわざ取沙汰せずとも当たり前の話で、一般的には、返済に行き詰った債務者は債権者に現状を包み隠さず公開し、その後、どういった返済原資でどう返済するかを提示して債権者の理解を得る必要があります。
ところで、しばしば、国や公的機関は「個人や民間とは違うから、『いくら借りてもいい』、とか、『返さなくてもいい』」という議論がされますが、それは非常に長期に亘り(ほぼ永遠に)、容易にいくらでも借り換えできる事が前提の上に立った議論であって、その前提が崩れたときには、こうした議論は成り立ちません。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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2 comments on “ソブリン(中央政府が発行する債券)が「安全」を意味しなくなる時”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
web上では元記事を見つけられなかったのですが,今回の文章が以下の記事と
関連しているとすると,
http://www.economist.com/opinion/displaystory.cfm?story_id=15017205
http://www.economist.com/businessfinance/economicsfocus/displaystory.cfm?story_id=15016124
文章中の,
> (アイスランド、ギリシア、スペイン、ハンガリー、ラトビア、ギリシアなど)
の部分は,(アイルランド,ギリシャ,スペイン,ハンガリー,ラトビアなど)
となるべきだと考えます。
(少なくとも,「ギリシャ」が2回出てくる時点でおかしいです。)
Icelandは昨年の時点で,通貨も株価も暴落し,国有化した銀行の債務も
払わなくなっているので,既に\”sovereign\”の意味はありません。
アイスランドのデフォルトの件に関しては,以下のページをお読みください。
http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55/e/3be067032e73755d34f96b28c8a8c6c0
ちなみに,今回の文章中で出てきた国と地域の人口のリストを作ってみると,
Spain 4000万人
Greece 1000万人
Hungary 990万人
Latvia 220万人
Ireland 420万人
UAE 480万人
Dubai 220万人
Iceland 30万人
となります。
(Dubaiの人口だけWikipediaから。他はCIAのFactbookから。
https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/rankorder/2119rank.html
http://en.wikipedia.org/wiki/Dubai )
人口規模を大雑把でも憶えておくと,周辺地域との力関係や,周囲に与える
影響の大きさを推測できるようになると思います。
(例えば,インドネシアの人口はオーストラリアの10倍。オーストラリアが
インドネシアを恐れる理由も分かります。)
オーストラリアから日本に移動中で、コメントの確認が遅れてしまいました。
正しくはアイルランドです。ギリシア2回も入力相違です。失礼しました。ご指摘ありがとうございました。