2010/07/02 06:08 | 昨日の出来事から | コメント(1)
アメリカの金融改革法案の意味するところ
今、アメリカの金融改革法案が成立に向けて最終局面にあります。 市場関係者によれば、若干の修正を経て成立する見込みとのことですが、その内容をよく考えてみると、とんでもないことに気付きます。
今回の金融改革法案の主な骨子は、(1)消費者金融庁の創設、(2)デリバティブ(金融派生商品)の規制、そして(3)破綻に直面した金融機関は公的資金を投入するのではなく、大手金融機関を差し押さえ、解体する際の新たな政府方針の策定する、等です。
これらは、2008年のサブプライム問題で個人の投資家にリスクをきちんと説明しないまま金融派生商品を販売した事に対する反省と今後の監視を強化する為に消費者金融庁を設立し、リーマンブラザース破綻の原因ともなった金融派生商品等への過度なレバレッジをかけ過ぎないように規制し、更に「大きい金融機関は破綻に直面しても、最終的には政府が面倒をみてくれる」(Too big to fail : 大きすぎて破綻させられない)と言った悪しき暗黙の了解から、「大きい金融機関でも破綻に直面すれば、公的資金を入れて救済するのではなく、粛々と清算手続きをする」というものです。
一見、これは今回の一連の金融危機の反省を生かした“立派な政策”のように見えますが、実は大変危険な要素を含んでいます。 そもそも、政府は金融危機に際しては最後の貸し手であり、金融危機が生じた時には、これを積極的に介入する(公的資金で支援等)ことで乗り切ってきた歴史的事実があります。
御存じのように、資本主義は万能ではありません。また、市場で全てが解決で来るほど市場は完璧でもなければ効率的でもありません。 こうした資本主義と市場の不完全さを補完するのが政府の役割であった筈にもかかわらず、アメリカはその不完全さを補完する役割を放棄しようとしています。 読者の皆様はおっしゃるでしょう「放棄するのではなく、危機に際して政府は新しい指針を策定するではないか?」と。 しかし、今回のユーロの通貨危機を見てお分かりの通り、パニックや危機は事前の指針や予想をはるかに超えてしまいます(だからこそパニックであり、危機なのです!)。 しかし、今後、アメリカはそうした際には、公的資金という最後の手段を自ら放棄することを宣言したのが今回の金融改革法案なのです!!
結果として、 当然、世界中の預金者はアメリカの金融機関から、EUや日本のように政府が最後の貸し手となって面倒をみてくれる他の国の金融機関に資金がシフトさせていきます。 そして、米国株が売られ、米ドルが売られるのは極めて自然な流れです。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “アメリカの金融改革法案の意味するところ”
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オバマ大統領が・・
チャプリン姿で現れ・・
空のポケットを見せ・・
ナイフとフォークを鳴らしながら・・タップダンスをしても・・
誰も
驚かないでしょう・・
投資家達は・・浜に打ち上げられた・・巨鯨になった・・白昼夢を見るでしょう・・・