2011/06/30 06:04 | 昨日の出来事から | コメント(1)
アメリカのテクニカル デフォルトの可能性とその意味する処
これまでは、世界中の金融市場参加者にとって「アメリカ国債は世界で最も安全な資産である」との共通認識の下、 様々な金融取引がなされてきました。 それがここに来て、御存じのようにアメリカの財政赤字上限枠問題をきっかけに、その前提条件が揺らぎ始めています(とはいっても1993年以来、16回も上限枠を引き上げていますので殆ど毎年の行事状態なのですが)。
そもそもアメリカ国債が、いつの時代も常に安全であったかと言えばそうでもありません。1933年には、アメリカの債務はデフォルトしていますし(当時は償還金を金で支払う事になっていましたがこれを拒否した為)、また、1979年にはUSD122m(当時の日本円にして約3兆円)の短期国債(Treasury Bill)の償還金を償還日に支払えなかった事があります。 このように、たとえテクニカルな理由であったとしても、デフォルトを起こすと、それ以降、市場での資金を調達する為には相当のプレミアム(余計なコスト)を支払わないと市場から必要資金を調達できなくなってしまいます。 ある大学機関の試算によれば、もし、テクニカル デフォルトを起こすと0.6%の余分なコストを支払う必要があり、これを現在のアメリカ国債残高に当てはめると、金額的にUSD86bn(日本円にして約7兆円: アメリカのGDP対比0.6%)と膨大な額になってしまいます(英誌エコノミスト)。
更に、最近では「アメリカ国債がデフォルトするとは思わないが、万一に備えて」の動きが、金融市場に具体的に表れています。 例えば、アメリカの5年物のCDS(クレジット デフォルト スワップ)の金利は2010年頃から最近までは50bp(ベーシス ポイント)で推移していましたが、ここに来て60bpまで上昇しています。 そして、とくに顕著なのは1年物のCDSで、最近までは10bp台で推移していましたが、ここに来て40bpまで急上昇しています。
このように、金融市場では、「あり得ないと思うが、万一に備えて」その対策を施すのが「正しい投資行動」なのです(どこかの原子力安全委員会の「全ての電源喪失は考慮しなくていい」という暴論は、金融市場の常識から見ても愚かな考えと言わざるを得ません)。
「そんな事は言われなくても分かっているよ!」と他人の事は、よくわかる皆様の中にも、「日本国債はデフォルトしない」と思っている人はいらっしゃいませんか(あるいはそう信じたがっていませんか?)
そして「8月までの延長国会で、特例赤字国債法案が可決されないかもしれないリスク」に対して「(原子力安全委員会宜しく)そんな事は想定しなくていい!」とタカをくくっていませんか?!
ある研究機関の検証に拠れば、「日本国債が2020年までにデフォルトを起こす確率は20%を越えている」との調査結果もある昨今にも関わらず、そんな事には一切、耳を貸さず、そういう人たちに限ってこう絶叫するのです。
「こんなに抱え込んでしまっている日本国債を『今からどうしろ?』と言うんだ!? 売れやしない!! 日本国債がダメならこの会社もダメなんだからそんな事は考えなくていい!それより目先の収益目標を達成すべく、もっと日本国債を買え! どうせ、万一の事があった時には、俺は退職して(もしくはリストラされて)この会社にいないのだから!!」
この類の話は、あちこちでありそう、、、、
と言う事は、やはり、日本国債のデフォルトはありうる話か。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “アメリカのテクニカル デフォルトの可能性とその意味する処”
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アメリカが先か・・
日本か・・
という質問なら・・
自信をもって・・米国・・
米国がやるなら・・次いで日本・・一蓮托生・・
一蓮托生になりたくないなら・・
頑張って・・もっと米国債を・・
債権のメビュウスの輪だな・・切ったはったの世界・・太く短く生きるか・・?
ジャパン・・万歳・・・!!