2011/06/23 05:47 | 昨日の出来事から | コメント(1)
ギリシャ問題、リストラクチャリングのケース スタディ
今週に入って、ギリシャへの追加支援策が一応の決着を見せたことで、為替市場や株式市場では安心感が広まっていますが、ギリシャ問題の本質的な部分は何も解決されていません。 今週に発足した新しい政権は、ギリシャ追加支援策の見返りに、更なる財政削減、公務員の賃金カット、税金の引き上げ、国有資産の売却等をしなければいけませんが、国民の反発は大きく果たして約束通りにできるかどうか疑問です(と言いますか、多くの人は実行できると考えていないのではないでしょうか。 ですが、そういう事にしておかないと、誰も望まないギリシャ国債をリストラクチャリングしなければならなくなってしまいます)。
今週号の英誌エコノミストでは、ギリシャ国債のリストラクチャリングのケース スタディを行い、それがギリシャ国債を大量に保有しているギリシャの銀行にどのような影響があるかを特集していましたのでご紹介したいと思います。
(1) 民間の債権者による自主的な償還の先送り(Voluntarily to roll over )
これは、民間で保有しているギリシャ国債の「自発的な償還先送り」という方法です。 特に2012年から2014年にかけてくる大量償還を一時的に緩和させる事によって、償還時の借り換えリスクを軽減させようとするものですが、これではギリシャ国債の発行残高は何も変わらず債務そのものの軽減につながりません。 また、現在、ギリシャの銀行が保有している(デフォルト寸前のリスクの高い)ギリシャ国債の残高を減らすことにつながりません(ちなみに、ギリシャの銀行が保有しているギリシャ国債の残高は、€70bn(USD100bn:日本円にして約8兆円)です。
(2)ソフト リストラクチャリング
これは全ての国債の償還日を一律何年か延長する(7年程度)一方で、利息と償還金は100%支払う方法です。 ドイツはこの方法を支持しており、これによれば利息も貰えるし、元本も戻ってきます。 このスキームによって、ギリシャ国債の現在価値は減少しますが、ギリシャ国債を保有する銀行にすれば、デフォルトよりは、これの方が費用負担(損)は少なくて済みます。また、償還期限を長くすることで、確定した引き当て損を毎年の業務利益で少しずつカバーできるので、急激に過小資本に陥る事もありません。
(3)Haircut (国債の額面を減額する)
これが最も過激な方法で、現在保有しているギリシャ国債の額面を一律減額カット(Haircut)するものです(実質的な部分的デフォルト)。 例えば、もし額面を一律20%減額しますと、ギリシャの銀行の多くは、大損をしますが、何とか過小資本に陥ることはなさそうです。 しかし、多くの銀行は銀行経営の健全性を維持するために増資に迫られることになります。
また、もし、額面を50%減額(Haircut)しますと、殆どのギリシャの銀行は過小資本に陥り、倒産する銀行も出てきます。 ちなみに、現在、ギリシャの銀行の預金残高は、ギリシャ危機以前に比べて20%程度の流失で、今のところ留まっています。
ヨーロッパのリーダー達はこの第3の選択肢を誰も望んでいませんが、これを回避する為には、ギリシャの国家財政を持続維持可能なものにさせる為の更なる大量の支援資金を必要とします(いずれ、それも限界が来ます)。 また、ECBは、現在の内規により「もし、ギリシャ国債の何らかのリストラクチャリングがなされれば、その後はギリシャ国債を担保として認めない」としていますが、市場関係者は「ECBは、ギリシャ国債のリストラクチャリングが起きても、その内規を変えてでも、ギリシャ国債を担保として引き受けざるをえないであろう」としています(さもなければ、金融市場が大混乱する為)。
更に、ECBは、ギリシャの銀行の取り付け騒ぎにならないよう、今後、その言動により細心の注意が必要であるとエコノミストは指摘しています(2007年9月16日に、イギリス第5位のノーザン ロック銀行取り付け騒ぎが起きた事を経験した「先輩」としての助言か)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “ギリシャ問題、リストラクチャリングのケース スタディ”
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>>現在、ギリシャの銀行の預金残高は、ギリシャ危機以前に比べて20%程度の流失で、今のところ留まっています。
この数字が・・どう動くか・・
現状のままなら・・息は出来るという事でしょうか・?・
ギリシャの神々は・・気ままだから・・・