2010/06/24 18:51 | 昨日の出来事から | コメント(0)
アボリジニに関する複雑な話
他国の歴史や原住民に関する話は、私の様な専門家でもなければ、よその国から来た者がとやかく言える立場ではありませんが、今、オーストラリアでは、選挙を前にしてちょっとした話題になっていますのでご紹介したいと思います。
御存じの方もいらっしゃるかと思いますが、現政権のケビン ラッド首相が、首相に就任した際に選挙公約でもあったアボリジニへの謝罪をした事は、国民から大きく評価されたのですが、ここに来て「謝罪はしたものの、その後も何も変わらないではないか?!」と言った批判が出てきています。 この問題の根本的な問題の一つに、「人種差別を禁止する一方で、人種差別が隠然と残っているオーストラリアの社会で、アボリジニという人種に対して特別な保護や援助を積極的にすべきかどうか?」といった問題があります。
アボリジニの中でも、こうした問題については意見が買われ、「援助や、特別な保護はいらないから平等の就業機会を与えよ!」と意見がありますが、実際問題として、英語の読み書きが出来ないし、算数の計算ができないアボリジニが多く、雇用の機会は困難です。 従って、反対に「もっと援助や保護を拡大してほしい」という意見も根強くあります。
アボリジニの平均寿命は他のオーストラリア人のそれよりも11年も短い現実や、経済的に困窮化していくアボリジニが増加する現状に対して、政府もいつまでも手をこまねいているわけにもいかず、最近は援助と保護の拡大の方向に舵を切り始めています。 ただ、これも目先に迫ってきた選挙対策の一環に過ぎないとの見方がもっぱらで、根本的な解決は相変わらず手つかずのままです。
前にもご紹介したかもしれませんが、アボリジニの友人が、自虐的に「俺たちの祖先は馬鹿だ! ジャム1個とタバコ一箱で、自分たちの大地と交換したのだから! その大地に石炭と金が眠っていることを相手は知ってやってきたにもかかわらず!!」 と悔しがる姿に、私は掛けてやる言葉がありませんでした。
『国』という漢字は、玉(玉:ぎょく、即ち、王であり、民であり、大地)を四角で囲む事を表します。 もしアボリジニの祖先にそうした概念があれば、こんな嘆きもなかったのではないかと思うのですが、そんなことを言っても「せんなき事」と分かる故に言葉が無いのでした。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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