2011/06/21 05:56 | 昨日の出来事から | コメント(1)
「瀬戸際リスク」に晒される世界経済
今週号の英誌エコノミストは、今の世界経済の危うさについて特集をしていましたので、ご紹介したいと思います。
御存じのように、最近の世界の株式市場は低迷をしていますが、基本的には現在の低迷は一時的なものである筈です。 と言うのも、日本では東日本大震災の影響によるサプライ チェーンによる混乱で生産活動が低迷しましたが、今後は復活してくると考えられ、 また、最近低迷しているアメリカ経済も、今年の夏以降の自動車生産は上向き、今後は年率で1%程度の景気の上乗せが期待出来ます。 また、これまで急騰していたオイル価格によって産油国は潤い、石油消費国(特にアメリカ)は原油高騰の影響を受けて消費を圧迫していましたが、ここに来て落ち着きを見せてきた(それでも年初来21%高)。
そして、中国やインドの新興国では、引き続きインフレが進行しているが(中国の5.5%、インドの9.1%)、最近のGDP伸び率は低下傾向にあり、中央銀行としては金融引き締め政策をしやすい環境が整ってきている。 これらの国にとってのリスクは、最近の世界経済の低迷を受けて、インフレ抑制政策を十分に取らないことである(しっかり金融引き締めをすべき)。
このように現在の世界的な景気低迷は一時的なもので終わる可能性がある一方で、今、世界経済に対して大きなダメージを与える可能性のある「瀬戸際政策リスク(risk of political brinkmanship)」が幾つかある。
一つ目は金融政策を巡る瀬戸際リスクです。 アメリカでは、去年から始まったQEII(量的緩和政策II)が今月で終了し、FRBはその延長を明確に否定しています(この考えは正しいと英誌エコノミストは評価しています)。 その一方で、ECBは7月にも政策金利の引き上げがほぼ確実な情勢です(同誌は、この政策は間違いであると批判しています)。
2つ目は、財政を巡る瀬戸際リスクです。アメリカでは財政赤字が、法律で定められた上限にまで膨れ上がり、更なる赤字国債を発行する為の財政赤字上限枠引き上げ法案を巡って民主党と共和党の間で駆け引きが行われています。 経済的にはアメリカの財政赤字上限枠の引き上げは、それほど大きな問題ではありませんが、政治家による不必要な瀬戸際交渉に拠って、短期的に極端な財政削減をせざるをえない、もしくはテクニカル的なデフォルトに陥るリスクが出ています。
また、ヨーロッパでは、ギリシャ救済を巡って、去年以来瀬戸際リスクがいつも付き纏ってきました。来月のギリシャへの追加支援策については今回も辛うじて合意をしましたが、根本的な問題は何ら解決されず(むしろ改悪)、 今後は更なる政治的瀬戸際リスクが高まると予想されます。
このように、現在の世界経済の低迷は、普通であれば比較的短期的に回復する筈なのですが、政治家のくだらない瀬戸際政策リスクによって、不必要な経済的ショックや危機を引き起こす可能性が大きくなっているのです。
そういえば、どこかの国でも、赤字国債発行法案の成立を巡って、首相が机にしがみつくばかりに、テクニカルに財政資金がショート(赤字国債が発行できない為に財政資金が不足)する瀬戸際リスクに晒されています。「最小不幸社会」を掲げた首相は、いまや国民を「最大不幸社会」に陥れようとしています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “「瀬戸際リスク」に晒される世界経済”
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それがギリシャと日本であるなら・・
日本は短期で・・片が付く・・今更体面なんて・・泥パックを付けたのと・・変わりない・・楽屋裏が舞台となる・・美意識の問題である・・伝統とは異なる・・モダン歌舞伎だ・・
ギリシャは・・欧米の美と政治の源流・・象徴・・潰すわけにはいかない・・か・・?本人が潰れたと言わない限り・・存続するのであります・・彩色が消えても・・ギリシャ彫刻は美しい・・
米国・西部劇の決闘・・ガンマンの戦い・・
共和党の凄腕も・・大きすぎる政府を倒すには・・ピースメーカーでは足りない・・と分かっている・・
キャノンがあるにしても・・弾がない・・ミサイルをぶっぱなすにも・・予備すらない・・後はトマホークの戦いである・・・