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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/06/09 05:40  | 昨日の出来事から |  コメント(3)

自分で自分の首を絞めるオーストラリア


おはようございます。

読者の皆様は、オーストラリア政府(オーストラリア国民)が、日本の南太平洋で捕鯨する事に対して、強く反対している事は御存じの事と思います。 これは、動物愛護団体、環境保護団体や政治的にはグリーン党が「あの愛くるしく?!知的なクジラ」を、日本の捕鯨船団が追いかけ回し、ロープのついた大きなモリを発射してクジラを仕留め、息絶えたクジラが血を流しながら船に引き上げられていく姿に多くのオーストラリア人は絶叫したのでした。 また、日本の近海で行われていたクジラ漁も彼らには「何と野蛮な!」と映ったのでした。

クジラに関しては、「よその国(日本)がオーストラリア近海でそのような野蛮な事をする事が許せない!」で済んだのですが、今度は、インドネシアに輸出していたオーストラリア産の生きた牛が、インドネシアの屠殺場で、足を縄で縛られ、強引になぎ倒され、最後には「こん棒」で頭を殴られて処分されていくビデオが、最近、オーストラリアで公開され、再びオーストラリア人は「何と野蛮な!」と悲鳴を上げたのでした(インドネシアでは、それは今に始まった事ではなく、通常業務の一環だったのですが)。 

そして、テレビで放映されて数日もしないうちに、全国から「インドネシア向けオーストラリア産の生きた牛の輸出を禁止する要望書」に署名した人が25万人以上も集まり(日本の人口に換算すれば100万人以上の署名)、慌てたジュリア ギラード政権は、昨日、インドネシア向けオーストラリア産の生きた牛の輸出を「インドネシアが生きた牛の処分方法を改善しない限り、差し止める決定」をしました。

動物愛護団体、環境保護団体やグリーン党はこれを歓迎する一方で、これまで生きた牛を輸出していた農家は、突然の輸出差し止めで大混乱に陥って怒り心頭で、政府に損害賠償を求めています。 一方で、これまで輸入していたインドネシア側は「オーストラリアから輸入できないのであれば、ニュージーランドやアメリカから輸入する」と反省するどころか、にべもありません。 

これに慌てたのは、事を起こした当事者であるオーストラリア政府で「オーストラリアからの生きた牛の輸出を止めれば、相手は困ってその対応を改善するであろう」と読んだものの、実際は完全に肩すかしをくらい、逆に自分で自分の首を絞める羽目となり、今、その事態の収拾に頭を悩ませています。

「何でもかんでも、自分の理屈や価値観で物事を押し進めるとこうなる」典型的な失敗例です。
というのも、生きた牛の輸出に関しては、インドネシアはオーストラリアにとって「カスタマー(お客様)」なのです! つまり、ビジネスの世界では、歌手の南 春夫ではありませんが「お客様は、神様でございます」なのです。

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3 comments on “自分で自分の首を絞めるオーストラリア
  1. ベルドン より
    オージー

    牧歌的な面が残っていて・・良いのでは・・?
    都会擦れていないのが・・ウリなのでございます・・・

  2. みんみん より
    キリスト教原理主義

    連投ですみません。追記します。
    捕鯨に関しても私は宗教的な問題と思っております。
    旧約聖書で「鱗のない魚を食べてはいけない」という食物規定があり、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教では鯨の肉は食べないことになっています。
    だけど仏教や儒教、ヒンズー教ではそんなの関係ねぇ。

    グリーンピースは環境保護団体とかっていうけどファンダメタリスト(キリスト教原理主義者)集団じゃないの?って私は見ております。

  3. みんみん より
    隣国への無理解

    要はインドネシアの牛の屠殺法が気にいらん・・と言うのですね。
    オーストラリア政府の救い難い点は、隣国のインドネシアがイスラム教の国である事を全く無視していることです。イスラム文化圏ではハラル(イスラム法に適している)という概念があり、ハラルでないものを食べてならないのです。イスラム法で定められた屠殺法を「野蛮だ」という自分の価値観で断罪するようでは商売にも何にもなりまへん。

    イスラム法をもっと研究し、ハラルな肉や加工品を輸出すればビジネスを拡大できたでしょうに。

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