プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2010/11/18 05:38  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

マイナス金利!?の債券が買われる理由


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに「アメリカのインフレ リンク債がマイナス金利で取引されている事についての記事がありましたので、ご紹介したいとおもいます。

インフレ リンク債と言うのは、例えば、額面1000ドルの10年インフレ リンク債の実質償還利回りが2%だとしますと、1年間に2%の利息を得ることが出来ますので、1000ドル×2%ですので、20ドルの利息を得ることが出来ます。 このインフレ リンク債の額面が10年後に価値が上がって額面1000ドルが2000ドルになっていると(インフレになって価値が上昇した場合)、 この時には、額面2000ドルに対してやはり2%の実質償還利回りが支払われますので、2000ドル×2%=40ドルの利息を手にする事が出来ます。

ところで、このインフレ  リンク債ですが、今のようにデフレ期待が大きい時、あるいは政府が量的緩和政策をして市場金利を異常に低く抑えると、色々と不思議なことが起きてきます。

例えば、米5年債の利回りが11月の2日に1.25%で、インフレ リンク債はマイナス0.55%で取引されていました。 この時のインフレ リンク債が織り込んでいるインフレ率は、1.25%−(−0.55%)=1.25%+0.55%=1.8%となります。 つまり、この債券価格は1.8%のインフレを織り込んだ水準で取引されている事になります。

「こんなマイナスのインフレ リンク債を誰が買うんだ?」と読者の皆様は思われるかもしれませんが、例えば、今後2年間のインフレ率を1.5%と予想し、Fedが今後2年間の政策金利を0.5%で維持したとします。 そうするとこれらを勘案したインフレ リンク債の理論利回りは、0.5%−1.5%=−1%となります。 もし、市場で−0.55%のインフレ リンク債が取引されていれば、それは自分たちが予想した理論値である−1%に比べて0.45%も利回りが高い水準で取引されていますので、「魅力的な投資」と言う事になります。 

こうしたちょっと常識的に考えられないような事が、異常低金利下ではしばしば起こります。
例えば、かつて日本でも、超低金利政策の下、ジャパン プレミアムが発生し(国内金融機関が金利を上乗せしないと資金を調達できなくなる事態)、その一方で外資系金融機関の円の調達コストがマイナスになった時がありました。 彼らは、マイナスのコストで調達した資金を、日本銀行の当座預金に(当座口座の預け入れ金利はゼロでしたので)、喜んで!?運用する事態が起こりました(利息がつかないにもかかわらず)。 しかし、日銀の当座預金口座のない外資系銀行に至っては、マイナスで調達した資金をマイナスでもいいから運用したいと同じ外資系金融機関に運用先を探す有り様でした(国内の金融機関に対して与信枠がなかった為)。 

読者の皆様は、「折角 マイナス金利で調達したものを、わざわざマイナスで運用しなくてもいいのではないか?」と、不思議に思われるかもしれませんが「調達したものは運用しないと利益を生まない」という基本的な仕組みを思い出していただければ、ご理解いただけると思います。 

今、こうした運用先のない余った資金が金や、商品市場に流れ込み、一部で、バブル状態になりつつあります。このことについては、改めてお話したいと思います。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。