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2010/11/16 05:49  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

人民元、実は上昇している?!


おはようございます。

最近は、通貨安戦争という表現にあるように、各国の通貨安政策がAPEC,G20で取り上げられ、特に、アメリカは中国の人民元安政策を非難する姿勢を強めていますが、先週号の英誌エコノミストに「人民元、実は上昇している?!」と題した記事かありましたのでご紹介したいと思います。

英誌エコノミストによれば、2005年1月を100とした場合、 名目上の人民元は2010年には約20%上昇しています。 アメリカは、それでもまだ30−40%は通貨安であると考えており、 このコーナーでもご紹介しましたが、ビッグ マックインデックスをみても40%程度人民元はいまだに割安であることが分かっています。

しかし、見方を変えて、実効為替レート(一般的にはCPI(消費者物価指数)を基にして計算します)について、英誌エコノミストが採用した実効為替レート(中国の国全体のCPIを使うのではなく、貿易に大きく関わっている都市部や太平洋に面した主要工業地帯のCPIを使った計算)によれば、実効人民元の価値は、名目上の20%以上の人民元高に更に25%以上も高くなっている事が分かりました。つまり、「2005年以降、人民元の実効為替レートは、対米ドルに対して50%近く上昇している」と指摘しています。 特に住宅賃貸価格の上昇、労働者の賃金の大幅な上昇が、中国からの輸出価格を押し上げ、対アメリカに対する価格競争力を低下させています。 言い換えれば、アメリカのいう「人民元安誘導政策のせいで、中国からの安い輸出品が、アメリカの産業にダメージを与えている」という指摘は、必ずしも当たらないことが分かります。 また、最近のアメリカの輸出実績は、リーマンショック以降で最も高い水準になっています(アメリカの米ドル安政策が功を奏した形)。

最近は、特に名目の為替レートと、実効為替レートの両方からの議論が盛んに行われます。 エコノミストなどの専門家は実効為替レートで議論しますが、それ以外の人は、やはり相変わらず名目的な為替レートで物事を判断しているようです。 確かに、その方が分かりやすく感覚的にも合っているように思っている人の方が多いのではないでしょうか。 

日本でも、名目的には円の価値は、米ドル対して15年振りの円高ですが、実効為替レートでは、それほど円高になっていないことが指摘されています(1995年を100として2010年で103程度の円高)。 「それほど円高ではない?!」と言われても、なかなかそう思えない方も多いのではないでしょうか。

このように「名目」と「実効」という議論は、実は数字以上に奥が深く心理的な要因にまで考える必要がありそうです。 この「心理的な要因」と言う事であれば、名目インフレと実質インフレにおいても、同様の事が言えるのではないでしょうか。 つまり、名目的な賃金カットは、目に見えて数字が減っていきますので分かりやすく直接的な痛みを伴いますが、これが名目インフレ以上の実質インフレを起こすことで、表面的な賃金は増えながら、実質インフレが更に上昇する形で実質賃金を下げる事の方が国民は受け入れやすく、心理的な要因で痛みが少なく済む“気”がするのではないでしょうか(実質的には同じ効果であっても)。 経済学が自然科学と違って社会学と言われる所以はこの辺りにあり、 また、このような行為を「国民を騙す行為!」と言ってしまえば身も蓋もありませんが、読者の皆様なら、同じ賃下げでもどちらが受け入れやすいでしょうか?

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One comment on “人民元、実は上昇している?!
  1. ぺルドン より
    それは・・

    朝三暮四・・心理的葛藤・・
    色彩遠近法・・視野誤差・・・

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