2019/08/23 05:20 | 昨日の出来事から | コメント(0)
安全の為にマイナス利回りの債券を買う投資家!?
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
解けていく氷の上にいるペンギンは、狭い氷の合間を通り抜けて海に飛び込まなければならない。年金や生保といった国際的な投資家も同様に、損失を被らない限られた安全資産も求めて不愉快な選択肢に直面している。ブルームバーグによって計算されたインデックスによれば、世界の国債と社債の4分の1はマイナス利回りで取引されている。総額15兆ドルの証券を持つ債権者たちは、それを償還まで保有すると損をする。
ヨーロッパの国債の多くの利回りは、2010年半ばに中央銀行が、主要な国債を市場から買い取る量的緩和を行ったためにマイナス金利になった。 2015年までヨーロッパの国債の40%はマイナス利回りになった。 しかし景気が上向き、中央銀行が政策を転換した為に2018年11月にはヨーロッパの債券はプラス利回りまで上昇した。
しかし、今や、多くの債券は再びマイナス金利に戻ってしまった。フランスの国債は2か月もマイナス金利で取引されている。アイルランドの国債は8月5日にマイナス利回りに突入した。財政的に保守的なオーストリアやオランダはかなり前かマイナス利回りになっている。JPモルガン チェースのアセット マネージメント部門のIain Stealey氏は「スペインやポルトガルもその内、マイナス金利になるかもしれない」と述べている。ドイツでは、全ての期間の債券利回りがマイナスになっている。
米中貿易戦争が激化するにつれて、投資家は資金を国債に逃避させ、利回りを押し下げている。一方で、中央銀行は世界経済の失速を懸念し、政策金利を引き下げ始めている。ECB総裁マリオ ドラギ氏は、最近、この夏の後、金融緩和をするかもしれない事を仄めかしている。
これまで多くの先進国では目標としているインフレ率2%を大きく下回り、中央銀行はそのインフレ率を引き上げる事に失敗してきた。投資家は中央銀行がそう簡単にインフレ率を引き上げる事は困難だと考えている。投資家がこのことを予測していることに使われている5年物のフォワード金利は、現在、ヨーロッパでは+0.9%であり、アメリカでは+1.7%である。こうしたことが債券利回りを一層押し下げている。基本的にはインフレは、将来の債券の購買力を侵食する(債券の価値を下げる)。従って、インフレ率は高ければ高い程、投資家はより高い利回りを要求する。そして、その逆の場合も同様で、インフレ率が低ければ低い程、投資が要求する利回りも低くなる。
そして、今、アメリカの投資家は、まだ債券に逃げ込んできている。10年国債の利回りは昨年11月に付けた3.25%をピークに急落している(価格が急上昇している)。それでも、現在は+1.71%で取引されている。しかし、これではヨーロッパの投資家は満足できない。何故ならば、為替ヘッジの為に3%のコストがかかるからである。もし、FedがECBよりも早く政策金利を引き下げたならば、その余地は大きくなる、というのもアメリカとヨーロッパの金利差が縮小する為にヘッジコストが安くなるからである。しかし、と同時に、アメリカの国債の利回りも下がっているので投資対象としては魅力がなくなる。とはいえ、利回りは、まだプラスなので投資として成り立つ。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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