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2019/08/14 05:57  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

FRB、金融政策のターニング ポイント?!


おはようございます。

先々週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

2015年以来、FRBによって決められてきた金利は上昇をし続けてきた。去年の九月、Fedの議長Jerome Powelによって説明された段階的政策金利の引き上げは、経済がその都度引き上げられた金利を十分に吸収できるかを見る為であった。彼は「今の処、経済は好調であり、我々の期待通りに成長を続けている」と述べた。

今、アメリカは、「Powellの(バレエの)ピオルッテ(旋回)」と呼ばれる政策金利の転換として扱われている。7月31日にPowell氏はこの10年以上で初めて政策金利を0.25%引き下げた。政策金利引き下げ後の記者会見では、その理由を、景気が弱い事、貿易政策に不透明感がある事、そして低いインフレ率を挙げ、「我々は持続維持可能な経済成長を下支えする」と述べた。

この動きは、世界的には十分に理解されていなかったけれども、金融市場では既に織り込まれていた。アメリカの多くの経済指標はまだ好調を維持している。今年の始め、消費者信頼感指数がやや失速したが、ここにきて過去の最高の水準近くまで回復している。7月16日に発表された指数では、アメリカ人は、まだ積極的に消費していることを示すものであった。また、最近では、悪名高い財政支出上限に関するリスクも沈下している。7月22日に政治家たちは、アメリカの赤字財政上限に関して合意がなされ、赤字財政の上限が引き上げられて急激な支出カットを避ける事が出来るようになった。コンサルタント会社Oxford Economicsによれば、もし財政赤字上限引き上げに失敗すれば、アメリカの実質GDPを0.4%引き下げる影響あったと試算している。

しかし、ビジネスの方は消費者信頼感指数と同様ではない。第2四半期の海外からの投資は減少している。また、国内のビジネス投資は6四半期連続で減少している。NYのFRBによれば、投資家は3分の1の確率で12か月以内にアメリカが景気後退に陥ることを債券価格に織り込んでいる。

ドナルド トランプ大統領の貿易戦争は、こうしたリスクを弱めるサインにならない。6月中旬の関税引き上げ効果は、その影響が完全に経済指標に織り込まれるまでに数か月かかる。7月18日にはIMFが世界経済の見通しをアップ デートし、その中で「世界経済の失速が見受けられ、2020年の回復はおぼつかない」としている。更に、最近の経済の力強さはいずれ断ち切られるかもしれないとしている。1月以降、Fedが政策金利の引き上げを中断して以降、世界の金融は緩和傾向になり、それ以来、住宅金利も低下している。

7月31日の会見の最後に、Powell氏は「インフレは不愉快なまでに低い」ことを強調した。値ブレの激しい食料品やガソリンを除く6月のインフレ率は1.6%に低下し、Fedの目標である2%をかなり下回った。その事が、Fedが金利引き下げの道を開き、予防的引き下げを行うこととなった。この予防的引き下げによって景気拡大を維持する意図があるが、これによって積極的な政策変更の余地はなくなり、一層の引き下げや早期の引き下げの必要ないと金利予測者たちは考えている。

7月31日のPowell氏のスピーチが終わる際、市場では年内に更なる政策金利0.25%の引き下げの73%を織り込んだ水準で取引されていた。しかし、彼は更なる引き下げをコミットすることを避け、今後の引き下げは、出てくる景気指標次第であり、今後の見通しに対するリスク次第であるとした。

Citi グループのCatherine Mann氏は「更なる政策金利の引き下げは世界的には歓迎されない」と述べ、直近の政策金利の引き下げが、投資を再び活発にするかどうかについては懐疑的である。彼女はトランプ政権の貿易戦争は、資本コスト(関税コスト)の問題ではなく、ビジネスをアメリカに引き戻す為であると考えている。彼女は、Fedがバブルを引き起こし、経済の幅広い分野で分断が起こり(格差が拡大し)、金融市場にリスクを醸成することを懸念している。

にもかかわらず、「もしPowell氏が投資家の期待を裏切ると、その反動は酷いものになる」とコンサルタント会社Capital EconomicsのNeil Shearing氏は警告している。ドル高や、株価の下落、あるいは信用不安が起きれば、Fedは更なる金融緩和に踏み込むかもしれない。

アメリカの金融当局者たちは、他の国の中央銀行の反応も考える必要があり、既に、彼ら(他の中央銀行)も金融緩和を始めている。コンサルタント会社Macro-policy perspectiveのJulia Coronado氏は「Fedは資本市場に問題を起こす前に、自分たちが世界の流れと別行動を取るには限界があることを認識すべきである」と述べている。あまりにも身勝手な行動を取る事、ドル高になる事、ドルのクレジットがタイトになる事、世界貿易を邪魔する事、等など、様々な問題がある。故に、Powell氏は、繊細なピューレッド(金融政策の転換)を行った。 しかし、彼は、来年にかけては更に繊細なピューレット(バレエの回転ダンス:金融政策運営)をする必要があるだろう。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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