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2019/05/28 05:54  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

米中貿易戦争


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

過去に中国は対米貿易で大幅な黒字を計上したが、今や、ものの見事に赤字である。過去にドナルド トランプ大統領が130回以上Twitterに投稿したが、それとは反対に中国のリーダーは、アメリカとの貿易については無言であった。しかし、ここにきてその態度は変わった。貿易戦争について国営メディアは挑発的な国家主義に対抗すると述べた。5月13日に最も多くの国民が見ているニュース番組の中でアナウンサーが「あなた方(アメリカ)が話し合いをしたいならば、我々のドアは大きく開いている」と述べ、「もし、あなた方(アメリカ)が闘いたいならば、我々は最後まで戦うであろう」と続けた。

この激しい言葉の応酬は、2国間の貿易戦争が過激化していることを示している。先週、アメリカの交渉官たちは、中国が約束を完全には守らないと疑った。中国の高官は、「それはアメリカが理不尽な要求をしているからである」と応酬した。交渉の決裂を受けて、5月10日にアメリカは中国からの200bnドルの輸入品に対してこれまでの10%から25%に引き上げる決定をし、その中には自動車の部品やスケート ボードまで含まれている。

5月13日に、トランプ大統領は、中国に対して報復しないことを警告し、それは「事態を悪化させるだけだ」とツイッターに投稿した。しかし、その1時間もしないうちに、中国はアメリカからの輸入品60bnドルに対して関税を引き上げる事を発表した。その中には天然ガスも含まれている。これによって事態はますます悪化した。アメリカの通商代表は、直ちに現在は関税の対象となっていない品目も含めた実質的には全ての中国の輸入品について関税をかける手続きを始めたと発表した。これらが実際に行われると、中国からアメリカ向けの年間輸出560bnドルに対して25%の関税がかかり、一方でアメリカから中国向けの輸出180bnにほぼ同等の関税がかかることになる。

こうした事態によって、既に痛みが生じ始めている。多くの経済学者は、中国の今年の成長率は0.5%引き下げられて6%程度になると予測している。また、フランスの銀行 ソシエテ ジェネラルによれば、アメリカでは物価が0.5%程度上昇することが見込まれている。もし、関税をかけるのが大好きなことに疑う余地の少ないトランプ氏が、全ての中国からの輸入品に関税をかけることなると、そのダメージは相当なものになる。ワシントンCDのPeterson Institute for International EconomicsのChad Bown氏によれば、中国に対するアメリカの関税の規模は、1930年のSmoot-Howleyの関税に似ており、それは世界恐慌直前に課税されたものであった。

こうなると、アメリカ人が中国でビジネスをすることは困難になるであろう。一つの可能性としては、国営メディアに煽られて、消費者がアメリカ製品のボイコットをするかもしれない。もし、この2つの経済大国が全面的な貿易戦争に突入すれば、その影響は全てのマーケットに広がると様々なモデルは予測している。

しかし、今は、まだ、引き返す希望がある。5月13日に、お互いに関税を発表した時、株価が急落したが、その後は世界の株価が回復しているのは、お互いに冷静になっていることを反映したものである。直近の関税手続きは、まだ実施されていない。アメリカの25%の関税は、それが発表されて以降、中国から輸出された物品に限られている。これらがアメリカに到着するには3週間かかる為、実質的な痛みは6月頃になる。中国の新しい関税は6月から実施される。つまり、まだ話し合いの時間が残っている。

中国の正式な声明では、中国はアメリカとの交渉に向けてその作業を望んでいる。また、トランプ大統領も6月に日本で開催されるG20サミットで中国の習近平国家主席と話し合いを持つことを望んでいる。前回、二人のリーダーがG20サミットで話し合いを持ったのは11月のアルゼンチンであった。この時、二人は、貿易戦争の休戦に同意した。こうした事もあって。今回も楽観的な考えが広がっている。しかし、同時に、その後、休戦から再び貿易戦争が激化したように、再び、決裂することも十分にあり得る。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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