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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2019/02/14 05:47  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

ヴァリュー トレードは結構なことだが、その見返りは殆どない!?


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

1980年台のコメディの中で、Rowan Atkinsonが休暇の旅行案内からいかがわしいイギリスの官僚まで様々な悪魔(悪役)を演じている。彼は、ゆったりとした上着を身にまとって呪われた地獄へ招き入れ、クリップ ボードに書き込んで相談をする。法律家になりたい? ならば泥棒と人殺しの仲間入りをすればいい(そうすれば法律がわかる)。 フランス人になりたい? ならばドイツ人と一緒にいればフランス人の事がわかる。 無神論者になりたい? 実に馬鹿げたことだと感じるに違いない。じゃあ、キリスト教徒になりたい?悪いが、その考えは間違っている。

人々は、非常に厳しい現実に直面しないまでも、時として自らの間違った考えに苦しむことがある。人々は、株式市場のリターンの低さ故に自ら信じていたことに疑問を持つ。「バリュー」株を好む投資家、即ち、会社の資産価値に比べて株価が相対的に低い株を購入する投資家は、自らの考えに疑問を持ち続ける事と格闘しなければならない。もし、あなたがバリュー株を買い、そして忍耐があれば、あなたのリターンは素晴らしいものである筈である。しかし、過去10年において、バリュー株トレードは、忌々しいストラティジーであった(パフォーマンスは悪かった)。

何か手にしたものがあったか? バリュー株は、去年末の時点では、他の株よりも見返りがなかった。 今年に入って反発したが、バリュー信仰を信じるにはあまりも期待外れであった。簿価の低い株のバスケットを見てみると、そこには、非常に問題のある自動車メーカー、銀行、エネルギー企業ばかりで魅力ある企業がほとんどない。唯一、バリュー投資の人に支持されているだけである。もし、あなたが、バリュー投資の約束(いずれ価値が上がる)を求めるならば、それに伴う苦しみを避けて通ることは出来ない。

バリュー投資のアプローチは、企業の本源的な価値に比べて価値が安い株を買う事である。こうした考えには、価格は投資家の雰囲気で様々動くが、株価の本当の価値は不変であるという考えに基づいている。つまり、株価は、会社の資産価値(建物、機械等)によって最終的には保障されている。おびただしい学術的な研究の中で、1992年にEugene FamaとKenneth Frenchが発行した権威ある本によって企業のプレミアムが明らかにされた。そこではバリュー株(会社の資産価値に対して低い株価)は割高になっている成長株よりもパフォーマンスがいいとされる。これは、企業のビジネス サイクルによってリターンがあるのかもしれない。つまり、資産の多い企業は、ビジネス サイクルが低迷期(景気後退期)には株価は低迷する。何故ならば、資産が無駄になっているからである(有効に使われていないからである)。

従って、株価が適正な水準に戻るには相当時間がかかる故に、本当にそうした現象が現れるかどうか疑問を持つのも当然である。利点の一つは、バリュー株は企業の本質的価値で保有する長所がある。こうした手法は、機械技術を基本とする企業では有用である。何故ならば、その価値の多くは、固定資産であるからである。しかし、IT企業では、その資産は、パテントやブランド、ノウハウと言った目に見えるものではなく、その価値の判断は難しい。また、会計基準によってはその価値の計測が損なわれることもある。工場やオフィス ビルは、会計上では資本資産として計上される。しかし、目に見えない資産は計上されない。だから多くのバリュー株の投資家は、決算書を信頼していない。彼らは企業キャッシュ フローやネットの負債、ガバナンス、そして収益の成長率を見ている。

こうした広い観点は、株価が資産価値対比安い時に現れるこうした悩ましい疑問を軽減してくれる。バリュー株を買うストラティジーは割高な株よりも安い株でなければならない。しかし、それは、ハイテク株よりも銀行株を買う事になる。純粋なバリュー株のバスケットは金融関連企業でひしめき合っている。 一方で、成長株指数は資産の軽いIT企業ですし詰めである。だから、IT企業が良くて銀行が悪いと、バリュー株のファンド マネージャーの言葉によれば「バリュー株は死んでしまう」。

バリュー株指数は、問題の多い産業のおかげで益々株価が下落する。長短金利差がほとんどない銀行、貿易戦争、排出ガス規制、電気自動車等で苦しむ自動車メーカー、そして原油の需要がピークを付けたエネルギー企業などが問題産業である。バリュー株を信じている人にとって、これが現実である。つまり、こうした企業には問題があり、その問題の多い企業の株を買っているのである。「だからこそ、こうした企業の株価は安いのである」とフランスの銀行ソシエテ ジェネラルのAndrew Lapthorne氏は述べている。問題は、バリュー株が上昇しないことが問題なのではなく、より正しい認識が必要なのである。

バリュー株を買うことは、独自の拝礼と経典と殉教者を持った厳格な教会みたいなものである。しかし、それは、「全ての投資家は何からのレベルでバリュー投資家である」と単に妄信している無神論者の足跡を見るようなものである。そんな値段まで上昇する事はあり得ないと唱える人は、市場が、彼らが買えない水準まで株価が上昇する事を目のあたりにするであろう。そして成長株投資はバリュー株投資にとってあり得ないだけに留まらず、成長株に投資をしている人にとっても株価の最高値がどこかわからない。全ての投資家は、常に何らかの疑問に苦しんでいる。そして審判が下された時(株価が暴落した時)、人々は、株価があるべき水準に戻ると期待している。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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