2015/06/26 05:48 | 昨日の出来事から | コメント(2)
現実的でない日本の財政再建計画
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
昨年11月に安倍内閣は当初予定であった2度目の消費税引き上げを2017年に先送りしましたが、現在の日本の財政赤字はGDP対比で6.9%、国の借金の残高(国債発行残高)はGDP対比で246%と他の先進諸国と比べて突出して高い水準となっています。
そこで、安倍内閣は今年の8月までに2020年までに国債発行をプライマリー 予算の黒字化(除く国債利払い費で黒字化)させるための行動計画を立てることになっていますが、現在検討されている様々な行動計画は、エコノミストたちからすれば「あまりにも楽観的な前提に立った行動計画であり、とても現実的でない」と指摘しています。
例えば、経済成長率の見通しと税収の増加見通しついては。OECDによれば、日本の経済成長率が1.5%であれば、国債発行残高は2030年にかけてほぼ現在の水準GDP対比200%~240%で推移しますが、成長率が1%に下がれば2030年には300%、2040年には400%まで上昇してしまいます。
驚いたことに、現在、政府はこの経済活性化政策によって2023年まで毎年2%以上の経済成長が出来ると信じていますが、この高い水準はアメリカのように人口が増大している国ですら達成が困難水準であり、日本のように少子高齢化の状況下で達成するのは不可能に近い水準なのです。
確かに、足元の経済成長率(2015年第1四半期)のGDPは年率3.9%ですが、これは在庫の積み上がりと、足元の消費拡大を期待して企業が設備投資を増やした結果であり、これが持続的である為には1980年代のバブル経済期と同じ経済成長をする必要があります。
更に今回の経済活性化計画には、労働市場の改革や社会保障改革などが含まれます。その中には、医薬品のジェネリック医薬品の使用比率を前倒しで現在の50%近辺から80%まで引き上げる計画を打ち出し、地球温暖化対策と消費電力の効率を目指して家庭のLED使用比率を100%まで引き上げる計画も打ち出しています。
こうした政府の行動計画に対し、IMFは「経済活性化計画における過度なまでに楽観的な行動計画は、安定的な財政の持続維持能力に対する信頼を大きく損なうリスクがある」と指摘しています。
これに対し、読者の皆様は「そうはいっても日本の発行国債の90%以上は国内で消化されており、そこに日銀が実質的には国債のリファイナンスを行っているので問題ない」とお考えかもしれません。 しかし、それも、日本政府が財政規律を維持している事が前提であり、更には、日本銀行の国債買い入れにも自ずと限界があります。
それでも安倍内閣が押し進めようとしているこれらの「楽観的」を通り越した「現実不可能」な行動計画に対し、エコノミストたちは「(こうした行動計画を前提に)今度の見通しを立てる事は殆ど予測不可能であり、とても政府の行動計画に付き合っていられない」と厳しく批判しています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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2 comments on “現実的でない日本の財政再建計画”
maehashi にコメントする コメントをキャンセル
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この記事を参考に課題をまとめたいのですが参考にさせてもらってもよろしいでしょうか?
いつもお世話になります。
どうぞお使いください。
前橋