2013/01/23 07:05 | 昨日の出来事から | コメント(2)
英誌エコノミストから見たアベノミクス
昨日、日本銀行は、政府との共同声明の形で2%のインフレターゲット政策を打ち出し、日銀設立以来131年続いたそれまでの金融政策運営の形態を大きく転換しました。 この政策転換の功罪は、歴史の判断にゆだねるところではありますが、目先的には、昨年の衆議院解散以降のアベノミクスの登場で、民党政権時代に80円割れまで進行していた円高は一気に90円近くまで円安になり、 また、8,000円台で低迷しきっていた日本株も10,000円台まで上昇する形で市場はこれを歓迎しています。
しかし、今回の政策転換は、ここ1~2か月の市場反応ほどそう単純でもなければ、目先的なものでもありません。 うまく行けば(私はそう望んでいますが)、インフレターゲットを金融政策の中心に据えているイギリスや私の住むオーストラリアのRBAのように中央銀行と市場の信頼関係がうまく構築される可能性もありますし、逆に下手をすれば、日銀史上最悪の政策判断であった戦時国債引き受けの二の舞いになる可能性もあります。 大事なことは今回の政策方針変更そのものの是非ではなく、「今後のやり方次第で如何なる可能性もある」といった観点から私たちは、政府と日銀の関係を注意深く見る必要があります。
ちなみに消費者物価指数2%の水準とは、1990年代前半の頃の物価上昇率と同じ水準であり、読者の皆様のご記憶に照らし合わせていただければ、この2%の物価上昇という数字の「意味合い」がご理解いただけると思います。
さて、これとは別に、今週号の英誌エコノミストにおいても、今回登場したアベノミクスに対して冷やかな立場をとっています。
まず、補正予算ですが、ケインズ的な観点から言えば、財政投資は、その投資に見合うだけのリターンがあれば将来の国債金利の支払いに対して問題ありません(何故ならば、リターンがコスト(金利の支払い)よりも大きくなるから)。 しかし、今回のアベノミクスで打ち出された補正予算は、道路の補修や、防災、新たな公共施設が中心でかつての自民党時代となんら変わりません(今回の補正予算を、例えば、エネルギー効率化のための投資やプロジェクトに投資すれば、そのリターンは支払金利よりも高くなる可能性が大きい)。
また、財界が強く望んでいる規制緩和や、国際競争力強化につながる政策は、一部の法人税の引き下げはあるかもしれませんが、TPPなどの大きな新しい貿易の枠組みに参加することには二の足を踏み、恐らく夏の参議院選挙までその判断は先送りさせることに安倍総理は腐心していると英誌エコノミストは指摘しています。 また、成長戦略に至っては民主党政権と同じく、「掛け声だけ」で、具体的なものは何も見えてきていません(唯一、iPS細胞などの先端医療関連投資に10年で1000億円)。
結局の処、今回のアベノミクスはデフレ脱却の為の3つの大きな政策を、安倍総理出身の山口は毛利家の家訓に倣って「3本の矢」と言っていますが、その実態は、景気回復の全ての責任を日銀に負わせる「一本の矢」である可能性が非常に高いと言わざるを得ません。
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2 comments on “英誌エコノミストから見たアベノミクス”
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エコノミスト・・
的を・・
見事・・射抜いた・・
が・・
一メートル程度の・・至近距離・・
本番・・
夏の参院選・・待ち・・
今度は・・国民・・我々が・・どれ程・・賢明か・・知恵あるか・・
問われる・・
その結果によっては・・
前橋さん・・豪定住・・市民権獲得に・・走るか・・・?(笑)
アベノミクスって結局日銀にインフレ2%まで買いオペをしろ、その金で銀行に国債をかわせて余った金で行政と企業で考えて税収の増えるような投資をしろと、これを徹底してやろうと言うことじゃないんだろうか、しかし並行して行財政改革を徹底してやりプライマリーバランスを確立させてやらないと必ず失敗する、だから維新八策は正しいんですよ、もうすでにシェール革命でアメリカ経済は大きく変容しているようだ、すぐに世界経済や国際政治社会に波及して行く、これにどう対応して行くかが今一番の課題だ、直接関係ない様に見えるが行財政改革をしないと本当の日本の国益になるような知恵が出てこないんですよ、政治家や官僚は自分たちの事よりオバマが言っている様に国民の事を考えないと、それが自分にもかえってくるんだから。