私事で恐縮ですが、新年早々非常にショッキングな出来事がありましたので、どうか聞いてやっていただければ幸いです。

毎年のことですが、私は年末年始には日本に帰ってきてお正月を日本で過ごし、加えて近くのスキー場でスノーボードをすることを年中行事としていましたので、今年も例年通りにいつものスキー場に行って、そしていつもと変わらぬ調子でチケットと貸スノーボードを申し込んだ時のことでした。

前橋：　「半日チケット大人1名と貸スノーボードをお願いします。」

チケット売り場のスタッフ：　「はい、おとな半日券は４５００円で、それから、すみませんが、貸スノーボードの際には運転免許証か何か本人を確認できるものをお願いします。」

と言われたので、これまたいつものように私が自分の運転免許証を差し出しだすと、売り場のスタッフは、私が書き込んだ貸スノーボードンの申込書の住所と運転免許に書かれている住所を見比べてそれが正しいことを確認した後、私に免許証を返そうとしたとき、そのスタッフは、はっと何かに気付き、じっと覗き込み、そのあと私に向かってゆっくりと、

チケット売り場のスタッフ：　「あのう～、お客様は、おとな半日券をお求めですが、お客様はシニア料金となります。」
前橋：　「はあ～～っ？　シニア？？　シニアってどういうこと？？？僕は、シニアではなく、おとなですが。」

チケット売り場のスタッフ：　「はい、お客様は“大人”ですが、お客様は今年で既に５５歳になっていらっしゃいますので、当スキー場では５５歳以上の方は、シニア料金扱いで大人料金に比べて１０００円もお安くなっていますが、いかがなさいますか？」　
前橋：　「えっ？　僕が　シニア？　え～～～っ、この　ぼ、ぼ、僕が　シ、ニ、ア　扱い？？？　げえ～っ、そんなシニア扱いを受けるのはイヤだなあ～！」

チケット売り場のスタッフ：　「そ、そうですか。　では、どうしても『おとな料金』をご希望でしたらそれでもかまいませんが、いかがなさいますか？　シニア料金はずいぶんお得ですよ！！

前橋：「　はあ、、、、、（しばし間があき）、す、す、すみません、やっぱり、シニア料金でお願いします。」
（と、気持ちよりも値段に屈伏している私。）

チケット売り場のスタッフ：　「かしこまりました。それでは「シ、ニ、ア、　半日券」1枚ですね。　３５００円となります。　それにしても、お客様、５５歳でスノーボードとはお若いですねえ～（笑）。　」

前橋：（心の中で、うるさい！ほっといてくれ！！　５５歳のシニアがスノーボードして何か悪い！！と思いつつも、売り場のスタッフに向かって）、「色々といいことを教えてくれてありがとう！」
チケット売り場のスタッフ：　「いいえ、どういたしまして！　是非、今日はスノー　ボードを頑張って楽しんでください！！」

と、励まされて売り場を後にしたのでした。

以上のようなただでさえショッキングなやり取りに加えて、更に、この売り場のスタッフの「シ、ニ、ア」という言葉が異常なまでにひっかかって仕方がありませんでした。　と言いますのも、売り場のスタッフの「シ、ニ、ア」の発音が、関西訛りで、語彙の後ろをずり上げるように発音するので、本来は英単語であるはずの「シニア」という言葉が、私には「死near　（　し　にあ）：死が近い」と聞こえて、余計に、がっくり来たのでした。

この日、自分が生まれて初めて「シニア」扱いれたのは非常にショックだったらしく、リフトに乗って頂上まで行く間も「シニア、シニア　か、、、この僕がシニアか、、、」と独り言を繰り返し、私の腕には、日付と有効時間が大きく表示され、その次に大きく「シニア」の表示の入った半日券が、こびりつくように“しっかり”と巻き付いているのでした！！

「老いとは、本人が望む、望まないにかかわらず、強引に、そして時として暴力的にその人に襲い掛かってくるものなんだなあ」　と思い知らされた満55歳の正月でした。

正月は　めでたくもあり　めでたくもなし　冥土の旅の　一里塚　　（一茶）