2012/05/10 06:28 | 昨日の出来事から | コメント(5)
英語の話せないギリシャ人とスペイン人から学ぶ事
再び、EUの雲行きが怪しくなってきました。 ご存じのようにフランス大統領選挙では、サルコジ大統領が破れてオランド氏が就任し、同日に行われたギリシャ議会選挙では、どの政党も過半数を獲得できず、更には連立政権も組む相手も見つからずに混乱しています。
さて、そんな政治屋(彼らは政治家ではありません!)の話はさておき、先週号の英誌エコノミストに「どうしてEU内で失業率に大きなばらつきがあるのか」といった記事がありましたのでご紹介したいと思います。
基本的には、EU内の移住や雇用は自由にもかかわらず、ドイツでは完全雇用に近い状態ですし、ベネルクス3国や北欧の若者の失業率は非常に低い状態になっています。 その一方で、ギリシャやスペインの若者の失業率は50%を越えています。 このように原則的にはEU内の居住の自由も就業の自由も約束されているにもかかわらず、実際には、域内で雇用に関する大きな偏在が生じています。
その大きな理由として、英誌エコノミストは、第一に「ギリシャ人やスペイン人の若者の多くは、仕事で英語を話す事が出来ず、一方で、ベネルクス3国や北欧の若者の多くは仕事で英語を使える」事を上げています。
第2に、表向きはEU内の移住の自由や就業の自由は保証されていますが、 実際問題として、各国の雇用や年金の仕組みはそれぞれの国の法律に従っており、例えば、スペインやイタリアでは労働者にとって非常に有利な法律や仕組みがあり、その一方で、ドイツやイギリスではそういった優遇があまりないといったように、国ごとによって制度や仕組みがあまりにも違い過ぎることがEU内の労働者の移動を阻害していると指摘しています。
更に、第3にギリシャやスペインの人が、EUの他の国に移住する際の移動費用が極端に高い事もその理由に挙げられます。 例えば、持ち家を売却する際には、ギリシャ、スペイン、イタリアでは、売却代金全体の10〜15%もかかってしまいます(ちなみにアメリカでは5%程度で済みます)。
去年以来、テレビでEUの信用不安に関するニュースを見ていると、ギリシャやスペインの若者が自分の英語力の無さや不勉強を棚に上げて、「いい仕事につけないのは大統領が悪いからだ!そして政治家が悪いからだ!」と叫び、一方で、これまで長年にわたり既得権益の恩恵に浴してきた公務員や独占業界の人々は「規制緩和をすれば、世の中は益々不景気になって悪くなる!」と若者のデモに乗じ、政治家は政治家で権力欲しさに益々、衆愚政治に走っています。
これは、何もEUに限った事ではありません。今、繰り広げられているアメリカ大統領選挙も、結局は大統領のイスを賭けての衆愚政治そのものです。 そして、八百万の神々のおはします東方の日出国でも、「この国をここまで悪くしたのは、総理と総裁(日銀)と円高のせいだ!」と財界、労働者組合、こぞって大合唱していますが、そんな事を言ったところで、我が身の不遇や閉塞感は一向に改善しません(それで儲かるのはマスコミと評論家だけ)。
それよりも、「『衰退していく国日本』にしがみつかず、毎日、やりたくもない仕事を安い給料で働くのではなく、どうやったら、そしてどこの国に行けば自分のやりたい仕事や給料のいい仕事に就くことができるだろうか」を考えるべきです。
こんな事を言うと、「オーストラリア辺りで、プラプラしている不逞の輩に言われたくもない!お前に言われなくてもそんなことぐらい十分に分かっている! にもかかわらず、それが出来ない事情がこっちには色々とあるんだ!!」とおっしゃる方もいるかもしれませんね。 それならば、では、まず、今から出来ることがあります。 それは、我が身の不遇を「総理と(日銀)総裁と円高のせいだ!」と文句を言っている人とは付き合わないと決心すべきです。 何故ならば、そんな事を言っている人から学ぶものは何もありませんし、時間の無駄だからです(多少の気休めにはなるかもしれませんが、、、、)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
5 comments on “英語の話せないギリシャ人とスペイン人から学ぶ事”
空の財布 にコメントする コメントをキャンセル
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。
最近のニュースで、はっきりとは覚えていないが、海外志向が非常に低いと言っていた。
要は、衰退してても、まだ、円高が示すように、相対的に、優位にあるんでしょう。
海外へ行くぞと決心するのは、「衰退してしまった」状況になるまで、無理かも?
ルクセンブルグ3国という呼び方が英語圏ではあるのでしょうか?ベネルックス3国という呼び方を覚えていましたが・・・けっして揚げ足とりではありません。向学のため、教えてください。
いつもお世話になります。
大変失礼しました。 正しくはベネルクス3国です。 お詫びを申し上げ、訂正させていただきます。
前橋
ポルトガル・・イタリアも・・
失業率が高い・・
他にも・・EU内で・・失業率が高い国は・?
彼らも・・
英語が喋れないからですか・・?
だとしたら・・
どうして・・
エコノミストは・・記載しないのでしょうか・・?
英語が・・原因ではないのか・・・?
友人のお父さまは、まったく英語できませんがロサンゼルスでお寿司屋さんしてます。
別の友人の弟さんは、英語不自由みたいですが、来日中のオーストラリア女性と結婚して、いまはオーストラリア在住。(プログラム関係の仕事らしいです)
ハワイでお世話になった日本人の美容師さんは、英語得意でないそうですが、日本の村社会がくるしいのでハワイで日本人相手の美容師に転職したとか・・・
かならずしも英語は、必須条件ではないようです。
必要なのは、どこへ行っても生計をたてられる「売れる労働技術」だと思います。
あと、みなさん、英語のできる伴侶をお持ちで。。。(てことは、やっぱり英語は必要かもですね)
それに、しがみつくべき守りたい「故郷」を日本にもたない、だから外国で好きな人とそれを作れる環境なような気もします。
日本がもし衰退していくのなら、原因は、企業が労働者を大事にしなくなったことと、労働者を育て、生活の面倒をみるということをしなくなったからだと思います。
生態系が壊れた島国をはなれるか、居残るか・・・
もたもたしていたら、やっぱり滅びるしかないのでしょうか。