2012/08/01 07:11 | 昨日の出来事から | コメント(1)
一筋縄にはいかないスペインの銀行救済
先週号の英誌エコノミストにスペインの銀行の救済に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
一般的には、株式会社の貸方には資本勘定としての資本金があり、負債項目として借り入れや社債があります。 銀行も株式会社ですので、同様に貸方には資本勘定として資本金や各種準備金があり、 負債項目には、預金から集めた預金、そして自らが発行した銀行社債があります。
そして、銀行も一般企業と同様に借方の資産項目(貸出、や運用している国債)に損失(評価損も含む)が発生した時には、まず、その損失を自己資本から補充しなければなりません(資本の毀損)。
もし、こうした損失が通常の営業利益の範囲を越え、更に自己資本を大きくし損する場合には増資、あるいは社債を発行してそれに見合う負債項目を再構築しなければなりません。しかし、これが出来ない場合、一般企業では倒産となりますが、銀行の場合は社会的影響が大きい為にそう簡単に倒産させるわけにはいかず、当局が支援して倒産をなるべく避ける様々な手立てがとられます。
今、ヨーロッパのスペインでも過去のバブル崩壊で大きく毀損した国内の銀行の救済を巡って様々な問題が起きています。 その一つに、スペインの銀行が発行した社債をどう扱うかの議論です。 一般的には、銀行の社債はシニア デット(Senior Debt)と言って、預金者の資金と同じくらいに銀行が経営危機に陥っても、暗黙の了解でこれがデフォルトしないようにその国の政府や中央銀行がこれを支援します。 つまり、預金や銀行社債は法律的には全額補償されていませんが、実質的にはこれらは全額補償されています(と言いますのも、もし、預金や銀行社債が全額返還されないとわかれば、預金者や銀行社債保有者が銀行や証券会社の店頭に押しかける取り付け騒ぎとなり、金融市場が混乱し、大きな社会問題になるからです)。
しかし、こうした当局の銀行に対する支援は最終的にはそれぞれの国民の税金で賄われるのですが、今、スペインの銀行救済に関して問題なのは、反社会的な組織(マフィアなど)が、こうした実質的に保護されている銀行社債を、高い利回りを当て込んで暴落している流通市場で大量に抱え込んでいます。
こうした弊害に対し、アメリカでは、アメリカの銀行社債に関しては、経営危機に陥った場合には、その銀行社債を新しい銀行社債と株式と交換するといった仕組みによって、投資家の自己責任を明確化させています。 しかし、なんせ旧態然としているヨーロッパにあっては、そんな仕組みは全くなく、今、ようやくこうした弊害に対する対抗策の検討を始めました。
しかし、EU域内で統一した投資家の自己責任の明確化で合意を取り付けるには至難の業で、その間、非合法的な組織(マフィア等)は、暴落した銀行社債を買いあさっては、“実質的”に全額補償されている銀行社債を保有して甘い蜜を吸っています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “一筋縄にはいかないスペインの銀行救済”
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ロゴフ・・
1800年以降・・西班牙13回・・仏蘭西9回・・独逸8回・・デフォルト・・
特に・・
西班牙・・デフォルトの歴史と伝統・・
隆盛を極めた・・フェリッペ二世も・・二回デフォルト・・
非合法組織とは・・海外の投機家の別名か・?(笑)
EUでは・・
何が問題か・・やっと判り・・縄を手編みで始めた・・と弁明・・
ペネロペの様に・・編んでは・・夜・・解く・・毎日なのか・・・?