2012/07/27 06:22 | 昨日の出来事から | コメント(1)
機能しないギリシャ連立政権
昨日のヨーロッパ市場では、ECBのドラギ総裁が「ユーロ圏を守る為に責務の範囲内で出来ることは何でもする」と発言したことから大きく買い戻されていますが、ECBの責務の範囲を越えたところ(政治)では、とてもEUをこのまま維持できそうにありません。今週号の英誌エコノミストに、再選挙後に辛うじて成立したギリシャの連立政権に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
6月の再選挙後に成立したギリシャ3党によるトロイカ連立政党は、基本的な考え方としては、ユーロに留まりながらも、これまでの財政削減一辺倒から成長させることにも配慮した成長を図るという事でしたが、実際には、EUとIMFから要求されている213年と2014年までに11.5bnユーロ(日本円にして約1兆円の財政削減をどこでやるかの調整がつかずにますます混乱しています。と言いますのも、連立政権のそれぞれの政党から政権に参加している大臣が自分の担当する省の財政削減することを渋り、他の政党が担当する省の財政を削減するように主張し合って揉めているのです。
例えば、法務省担当の大臣Antonios Roupakiotis 氏は「(自分の担当する法務省は)既にEU950millionから、EU550millionに削減しているのに、更なる削減を行うことは国家の法的手続きが崩壊するに等しい」とし、「(これまでの財政削減のせいで)裁判の遅延、脱税や賄賂が広がっている」と指摘しています(官僚に踊らされて自分の担当する省の利権を守ろうとする動き)。
また、別の政党から出ている年金や社会保障を担当する大臣は「これ以上の年金や、医療などの社会保障を削減すると、人々の生命を守ることが出来ない」と言っていますが、2010年以降実施されたギリシャの社会保障の水準は、いまだに他の南ヨーロッパの国々のそれに比べて高い水準にとどまっています(EUやIMFは「これ以上削減できない」とするギリシャの主張に正当性はないとしています)。
結局の処、新たな財政削減をどの連立政党も自分の担当する省では引き受けたがらず、時間だけが空しく過ぎ去ってしまっているのが現状なのです。 その一方で、次の年金や社会保障の支給期限が8月の迫っているのですが、EUとIMFに対する財政削減計画の提出期限は7月26日となっており、既に期限が来ています。
今後、ギリシャ連立政権が自らの削減計画を策定することが出来ない場合には、EUやIMFからの一方出的な削減計画を飲まざるを得ません。 何故ならば、EUやIMFからの資金支援がなければ、8月に支払予定の年金や公務員の給料支給が出来なくなってしまい、社会は混乱してしまうからです。
ここからの教訓は、連立政権を組むというのは、一見、聞こえはよく、現状打開の切り札のように思われがちですが、何のことはない、結局はお互いの党利党略がよりむき出しになって却って何も決まらず、事態を益々悪化させてしまっています。
そういえば、東方の日出国でも現在の政治の混乱の切り札にこうした考え(大連立構想)が取り沙汰されますが、現在のギリシャ連立政権の目を覆わんばかりの惨状をみれば、それが如何に愚策であるか容易に見当がつきます。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “機能しないギリシャ連立政権”
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トロイカの調査・・
九月にかかる・・そうだから・・
八月は・・払ってもらえるのでは・・
西班牙が妖しいのに・・
ギリシャデフォルトなら・・
ドラギのリップサービスでは・・
支えきれない・・・