2014/06/24 14:30 | 昨日の出来事から | コメント(1)
日本の地方銀行の行方
今週号の英誌エコノミストに日本の地方銀行の将来に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います(わざわざイギリスはロンドン辺りから言われなくても読者の皆様はお分かりとは思いますが、、、)。
日本の地方銀行の数は約100行あり、地銀全体の貸し出し残高は日本全ての金融機関の貸し出しの40%を占め、それは日本の5大メガバンクのそれにほぼ匹敵します。
しかし「その実態と将来性については非常に厳しいものがある」と英紙エコノミストは指摘しています。 その理由の一つに、今後の日本の人口構造の変化が挙げられます。 政府機関の試算では2040年までに全国2000近くある市町村の内、約半分の900近くの市町村が高齢化と都市への人口移動によって、現在よりも減少もしくは現在の市町村としての機能が立ち行かなくなります。 日本の地銀は、こうした市町村に密着し、これに特化することでこれまで生き長らえてきましたが、今後は彼らの顧客そのものが減少することによって銀行業務が圧迫されることは間違いありません。 一方で、東京、名古屋、大阪などの大都市に人口が流入することで5大メガバンクは、人口増加の恩恵を受けて収益機会は更に大きくなる可能性があります。
理由の2つめは、5大メガバンクは海外の貸し出しを積極的に行うことで収益を上げていますが、日本の地方銀行のほとんどは、自己資本が十分でない為にBIS規制をクリアすることが出来ずに海外でのビジネスを展開することが出来ません(といいますか、1990年代のBIS規制導入と日本の金融危機の際、地銀の大半は海外業務から撤退しました)。
その中にあって、一部の地銀の中には(例えばスルガ銀行)、自らの工夫と努力によって個人の貸出先(特に主婦層への貸し出し)を開拓し、この銀行の利ザヤは、他の地銀の平均利ザヤの2倍近くもありますが、それ以外の大半の地銀は、現在、日銀が展開中の超低金利政策の下で利ザヤはほとんどなく、銀行経営に必要な自己資本のクッションは殆どありません。
こうした状況に対し、金融庁は地方銀行同士の統合が望ましいと考えていますが、今、差し迫ってその必要のない現在の地銀にとって、そのようなインセンティブは全く働きません。 それどころか、地銀の中には「現在のアベノミクスがうまく機能し、日本経済がデフレを脱却してインフレになれば、利ザヤは改善して地銀の収益力も回復するだろう」と楽観視している節があると指摘しています。
英誌エコノミストは、こうした何もせずに日和見主義的に生き長らえている地銀の事をゾンビ企業と批判し、来るべき時に、いよいよ収益性がなくなって自己資本を食い潰し始めた時には既になす術がなく、こうした地銀は間違いなく統合する側でなく、統合される側であるに違いないと警告しています。
読者の皆様のご近所の地銀は如何ですか。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “日本の地方銀行の行方”
パードゥン にコメントする コメントをキャンセル
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オーストラリアは、大英帝国の一員として、金利追随していきますか?
過去のイギリスとオーストラリアの金利比較チャートをお持ちですか?
グッチーのように、時々、長期に修正を続ける事で
有効になるオーストラリア関連の図を見つけていただけると
ありがたいです。
お題とあまり関係なさそうですが、英誌が何か書くときは、自国のことを
言ってほしくない傾向がありますので、解析してみましょう。