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2018/06/28 05:45  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

ヨーロッパ株は買い!?


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

1990年代のテレビ コメディ シリーズ「Seinfeld」のエピソードの中で、Jason Alexander演じるGeorge Costanzaは、自分の直観や衝動によって悉く間違える。そこで、彼は全て自分の直観や衝動とは反対の事をすることに決心する。 すると、新しい彼女ができ、夢のようないい仕事につくことが出来た。 彼曰く、「これらは私の常識やこれまで自分が感じてきた正しい判断を完全に無視したから出来た」と。

投資における成功も、しばしば自分の感情とは反対のことをすることで得られる。そうでないと欲と恐怖に翻弄されてしまう。それでも恐怖は有益な感情である(一方で欲は有益ではない)。 とはいえ、最近のイタリアの混乱を無視するのは賢明ではないだろう。今、イタリアでは、UEから離脱するかもしれないとの懸念からイタリア国債の金利が急上昇している。その後、最悪の懸念は沈静化したが、連立政権は大統領が混乱を引き越しかねない政府を支持することで樹立している。

こうした事態から起こる衝動としては、殆どリスクのない債券に限らず株も含めてユーロ圏の資産を手放すことである。しかしこうした本能は投資家を裏切りかねない。というのもこうした事態は全ての人が明らかに知っていることであり、故にユーロ圏の株を買う事は問題にならないといった議論が起こっている。

近い将来、ヨーロッパは高齢化に突入する。こうした状況下では、企業は倒産リスクよりも安定を望む。ヨーロッパの取引所では、第2次産業が中心で、自動車産業や石油関連や機械産業の割合が高い。しかしアメリカの株式市場の中心は、IT産業が中心である。また、ヨーロッパの銀行が株式指数を主導している。その中にあってドイツ銀行は、売りポジションをつくる恰好のターゲットになっている。 昨年、ユーロ圏のGDPは失速した。 こうした中、数々の欠陥が露呈した。例えば、ユーロ圏全体の預金保険、あるいはユーロ圏全体の失業保険といった制度上の仕組みであり、今後、厳しい景気後退が起きた時、ユーロ圏が崩壊する可能性がある。

しかしこうした事態はすぐには起きないだろう。長期的にユーロ圏の株を保有する事はぞっとするものであった。故に、ユーロ圏の巨大企業で構成されているインデックスEuro Stoxx50は、今もって20年前の高値を更新していない。更に、300の中小企業も含めた指数でも、2000年に付けた高値を大きく下回ったままである。こうした傾向を辿るのは極めて当然であり、これに逆らって買うのはかなり物議を醸す。

しかし、まず、始めにユーロ圏の株価は安い。ユーロ圏の株式から得られるStoxx50の利回りは6.4%である。一方で、アメリカのS&P500の利回りは4.8%であるが、何も生まない現金や、インフレ調整後でマイナス利回りになっている国債を保有するよりずっと魅力的である。 ただし、株式投資には忍耐が要求される。とはいっても長い目で見れば、ヨーロッパ株に投資してうまくいくチャンスはある。

更に、収益が改善する余地がある。例えば、銀行をとってみると、不良債権とそれを償却する自己資本は銀行の収益を圧迫する。しかし、今やイタリアの銀行ですらその資産は健全である(十分に自己資本を確保している)。 ファンド運用会社M&G のEric Lonergan氏は「もし、短期金利が少しでもプラスになれば、銀行の収益は大きく上振れする」と述べている。同様に他の企業でも、これまで景気後退期に支払って来た賃金や家賃が企業収益を圧迫してきたが、景気が上向けば、これらを一掃することが出来る。しかし、反対にアメリカは企業収益を更に押し上げるものがない。というのも景気サイクルが更に成熟期に向かうからである。

確かに、ユーロは脆い体制である。EUの国々は同じ通貨を使用し、豊かな国から貧しい国に財政支援をし続けながら辛抱強くよく頑張っている。故に、ユーロ崩壊のリスクはここにある。しかし、たとえそうだとしても、それ以上に不確実なものとして指摘されるべきものもない(みんなわかっていし、それ以上のリスクもない)。

投資家が、何に心配しているかは、その時々で変化する。例えば、2016年初、中国の積み上がった過剰債務が取り沙汰され、それが金融市場を恐怖に陥れた。今や、それが取り沙汰されることはない。また、トランプ大統領の外国の国々に対する政策でユーロが崩壊すると指摘する人はほとんどいない。確かに、重大な顛末を引き越しかねない。 しかし、それではユーロに対するリスクだけが誇張されている。そして、そうしたリスクがより現実味を帯びる時、人々は、そうしたリスクをより信用する。

しかし、衝動や直観が必ずしも投資家に良い結果をもたらすとは限らない。イタリアの政治的混乱は、2012年のギリシャ危機の再現よりも恐ろしいかもしれない。「どういったケースが、ヨーロッパの株で儲かるか?」とLonergan氏は問いかけている だからこそGeorge Costanzaを思い出してほしい。すべての衝動や本能によって、あなたが投資を躊躇うとき、反対のことをすることを考えてみてはどうか。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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