ブログ記者によるオンライン新聞 グッチーポスト

The Gucci Post [ぐっちー編集長の金融・経済を中心としたオピニオンブログ News Paper]

2017/07/15 15:22  | コラム |  コメント(6)

気まぐれ半十郎⑦

「米をはじめあらゆる農産物・・野菜も・・草鞋・縄・筵・手工芸品等等・・物の売り買い全てに一割の口料をかけ申した。売りにも買にも。この正直取締会所が取り仕切り・・それ以外の処では・・一切売買出来ぬように仕上げたのみか・・値の付け値はこの正直が・・一方的に付けられるからくりでござった」
「想いに勝る」
半十郎は鳥肌がたった。それ程のあこぎを・・武家が藩がしでかすとはと・・驚きを通り過ぎていた。
「それだけではござらぬ」
梅干は吼えた。
「正直取締会場では・・他藩の藩札が使えません。金銀銅銭だけです。おまけに支払いは・・藩札のみ・・藩内で貨幣を使えば・・高い咎料が科せられ申した」
「踏んだり蹴ったりではないか」
半十郎は・・金龍餅を思わず口に放り込む。
「それだけではござらぬ」
梅干しは怒りで歯を鳴らした。
「節約令を出し・・農民は白米を食べれなくし・・食べれなくなった白米を・・強制的に供出させ申した」
「何たることぞ・・一揆がおきるぞ」
半十郎は気付くと・・立ち上がって呻いていた。
「それだけではござらん」
梅干しも負けず立ち上がり・・呻いてた。
「飢餓に襲われた農民は・・娘や女房を廓に売り申した。農民だけではなく・・足軽や軽輩の徒士も娘や女房を売り申した。余りの数が多いので・・売値が半値になっておる程の・・体たらくでござる」
半十郎は・・ものすごい梅干しの剣幕に・・
「お主・・お内儀を売ったのか」
と思わず漏らしてしまった。梅干は目を固く閉じた。閉じたままふり絞る様な声で言った。
「娘の病の為でござった」
「娘御は治られたか」
梅干は大きく首を横に振った。
「その死ぬ思いで娘・・妻を廓に売る金にも・・お役金を掛けておるのでござる。遊郭の遊びの支払いの金にも」
「それは許しがたい政だな」
「それだけではござらぬ」
まだ梅干の虎吠は続いた。
「百姓に借金を割り振りし・・拒むと千日の賦役を命じた。家財・着物を売り払わせ・・その代金を藩預かりとし申した」
江戸に戻れば伝手を使い・・幕閣に挙げねばならんと・・半十郎は怒りを燃え立たせた。
「拙者と慎太郎は・・」
梅干は淡々と言った。
「拙者は短い命じゃから」
慎太郎は声を足した。
「最早これ以上は見過ごせぬと・・正直の会所を夜半に襲い申した。当直の手代を切り申した」
「しかし・・お手前の腕なら・・木刀で打ち据える事など・・
容易い筈だろうに・・切り捨てずに」
「その二人は役目を笠に着て・・相談に来る妻女に乱暴狼藉する以外にも・・賄いを公然と要求するやからでござった」
「それ故切り捨てたか・・しかし切り捨てると・・いっそ大事になるのではないか」
考え込む半十郎に・・梅干は片手をふり・・初めてにこやかに言った。
「正直の会所の金を強奪し・・足軽や軽輩の者・・職人や貧しい町人の家に・・ばら撒き申した」
「石川五右衛門の真似事かい」
半十郎は膝を叩いた。
「それだけではござらん。廓の遊び女達にも・・残らずばら撒き申した」
「それは豪儀だな・・吉原の大門を閉じたのかい」
梅干しは照れくさそうに笑った。
「馬乗りの士分になりたかった。最後にやっと裸馬だが・・乗れる事になった」
梅干は豪快に笑った。半十郎は預かった胴巻きを・・着物の上から叩きながら尋ねた。
「この小判は・・田郡奉行殿に渡せは・・用向きは心得ておられるのだな」
「百姓衆に使い下されと」
「承知」
団十郎は更に尋ねた。
「まだ残りの話がござるな。どうして・・九鬼藩で目付を待つのか・・知らぬ振りはできねぇ」
「拙者共がお城下を馬で引き回されれば・・湧き立つでしょう。
そして打ち首になれば・・更に騒動は大きくなる」
「それだけじゃ・・大善野郎どもは屁の河童だぜ」
半十郎は・・梅干を探るように見つめた。
「しかり・・大善共は批判めいた言葉を漏らせば・・士分も容赦なく・・捕えて・・牢入りや閉門は当たり前でござれば・・
先日も庄屋が口を漏らし・・
殿豆腐 家中赤味噌 唐辛子 阿呆辛うて したがたまらん・・
戯言を聞かれ入牢でござった」
「大善に抗じられる御仁は居ねぇのか」
じれったそうに半十郎は・・口を挟んだ。
「反大善派の参議は・・お役御免・・隠居させられ申した」
「他に・・影に隠れている御仁は・・例えば・・梅干殿と目付の仲を持った御仁は・・」
梅干は楽しそうに笑った。
「さぁ・・それは・・」
「田郡奉行殿と会えば・・分かるというのかい」
半十郎も・・心から愉快そうに笑った・・・

翌朝・・障子戸を開け川を見下ろすと・・二十石船が下って行く。捕り方に囲まれて・・梅干と慎太郎両名が・・真ん中に座っていた。丸腰で腰に太い縄が掛けられてある。見つめていると・・梅干半十郎が目を上げた。半十郎を捉えると・・満足しきった笑みを見せた。満ち足りた侍の笑いだった・・

6 comments on “気まぐれ半十郎⑦
  1. おののののか より:
    石川五右衛門かい 笑

    江戸だったら誰かが必殺仕事人に依頼したでしょうにねー。丹波では無理か。笑
    実際、そんな集団がいたことを期待したいですね。

  2. ペルドン より:
    ホントの話

    御先祖様・・
    陰で暗躍・・・
    ・・( ^ω^)・・・(笑

  3. おののののか より:
    すばらしい

    伊賀の系列と関係あるのですか・笑 そのものだったりして。
    ねずみ小僧次郎吉のモデルもいたんでしょうかね。

  4. ペルドン より:
    おののののかさん

    事実は小説よりも奇なり・・
    その通りですね・・
    伝来の古文書の山・・大洪水にやられ・・
    親父とお袋が一晩掛かって・・燃やしたと聞き・・
    まだ生まれていなかった僕は・・切歯扼腕・・
    我が家のブラックホール・・永遠の謎・・
    ・・( ^ω^)・・・(笑

  5. おののののか より:
    やはりそうでしたか

    そうと聞いちゃあ、見る目が変わりやすぜ、旦那。決して源氏の奥方に劣る流れではありやせん。笑 武芸のほうも御開帳を。毛唐だって一目置きやすぜ。

  6. ペルドン より:
    おののののか氏

    只の足軽の家でがんす・・・( ^ω^)・・・(笑

コメントを残す

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。