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The Gucci Post [ぐっちー編集長の金融・経済を中心としたオピニオンブログ News Paper]

2017/07/14 12:41  | コラム |  コメント(2)

気まぐれ半十郎⑥

涼やかな風が・・川から吹きあがって来た。波のように続け様に吹き上がり・・火照った半十郎の頬を冷やしてくれた。緊張していた空気がなごむ。
「ここまで話した以上・・止める訳にはいき申さぬ」
梅干は・・自分を言い聞かせるように言った後・・横の浪人を見た。顔色の悪い連れは・・微かに肯き・・
「拙者は信州浪人・・西郷慎太郎と申す・・槍使い」
と挨拶したが・・息が苦しそうだった。長くはねぇなと半十郎は診た。梅干は・・半十郎の目を見据えながら・・口を重々しく開いた。

「正木藩は莫大な借財凡そ10万両。藩の約7年分の賦で・・この慎太郎同様・・息も絶え絶えでござった。拙者ら同様のその日暮らし。だが悪い時には悪いことが重なり申し・・不作に見舞われ・・今度は飢饉でござる」
半十郎は・・
「幕府も同じこった・・そんな風にも見えるぜ」
と呟いた。梅干しは頷きながら・・低い声で続けた。
「流石無能な重臣も・・このままでは藩が潰れると・・追い詰められ申した」
判十郎は江戸者らしくわさびを利かせた。
「出てくるのは・・賭けたっていいや・・佞臣だろう」
二人の浪人な者は・・重苦しく頷いた。
「塩見大善」
梅干しは口から石を吐き捨てるように・・名を出した。
「何奴でぇ・・その大善」
「家老でござる」
梅干しに續けて・・慎太郎が後を追う。
「足軽上がりでござる」
「へぇ・・丹波じゃ・・足軽が家老になる筋道が・・出来上がってるのかい」
進十郎は驚いた序でに・・軽口を叩いて笑った。
「江戸の部屋住みは・・丹波に御奉公口を見つけねば・・」
「その言葉だけで・・正木藩なら家士は閉門でござる」

婆さんが戻って来た。刻を見て計らってくれたようだったが・・生憎とこちとらの話は・・簡単に済む中身ではなくなっていた。
「婆さん・・良ければ・・貸し切りにしてくんな」
半十郎は気軽に声をかける。婆さんは黙ってうなずいた。
「いくらでぇ」
「二分」
半十郎は二部金を置いた。婆さんは旗を降ろし・・手早く店仕舞いをする。盆に山盛りの金龍餅を持ってくる。
「うめぇ餅だが・・そんなに食えねぇよ」
「二部に込み」
婆さんは手短に答えた。
「婆さん・・侍の出だな」
半十郎は声をかけた。婆さんは一瞬動作を止めたが・・
「身上話は二部に入らぬ」
と応え茶を継ぎ足した。
「後で来ます故・・そのままうっちゃっておきなされ」
婆さんは出て行った。後ろ姿がキリリと引き締まっていた。昔なら評判の小町だったろう。

三人の世界になった。夏の激しい日差しを簾が遮り・・川からの風が金龍餅に次ぐ・・御馳走になっていていた。

「藩は江戸家老の原惣左衛門が城下に戻り・・才覚をかわれ足軽から取り立てられた塩見大善、商人から士分に取り立てられた関孫七・・それに・・政事向万法の掛り三四人が選ばれ申した」
「藩政の改革かい・・御公儀でも散々やった挙句・・更に悪くなっちまった書き物があらあ」
半十郎は渋い顔をした。
「やがて塩見大善が家老になり・・藩は動き始め・・他の家老や上士は・・一切口出し出来ぬようになり申した」
押えているが・・梅干の憤りがふつふつと伝わって来た。
「おめえさん・・随分詳しいが・・藩内で何してたんだよ」
「心張り棒でござる」
半十郎は少し戸惑った。
「心張り棒って何でぇ」
「用心棒でござる。城下と川を挟む向かい側に・・過ぎたる大きな廓があり・・その元締めと城下を元締める親分の居候でござる」
「そんな大親分がいるのか」
「手下は百を越します」
「城と対面張れるじゃねぇか」
半十郎は・・うっすらと梅干の背面を見れ始めたように思えた。
「じゃおめぇさん達が・・ばっさりやった中身を・・げろしてくんな・・本気じゃねぇといけねえぜ・・何しろ頭弱いんでねぇ」

梅干しは前のめり気味になった。囁くようななった。
「まず塩見は・・諸商業正直取締会所を造り申した」
「なんでぇ・・その正直ってのは・・聞いた分じゃ不正直とも聞こえるぜ」
「その通りでござる。不正直でござった。まこと不正直取り締まり会場でござった。藩制定の問屋・・正木藩産物会所と申すが」
「何をしでかしたか・・判る気もするが・・どえらい事をしでかしたんだろう・・本当なら・・てめぇたちが後ろ手に引括られる事をよぉ」
「図星でござる」
梅干しの目は怒りで輝いていた・・・

2 comments on “気まぐれ半十郎⑥
  1. おののののか より:
    改革散々やった挙句、御公儀も更にわるくなっちまった

    その書き物何の本ですか。笑 ということは水野忠邦の後、もう米国・ロシア船が姿を現し始めて、幕末間近の時代なんでしょうか。

  2. より:
    そうですね・・おののののかさん

    頭を叩けば・・
    文明開化の音が・・
    もうすぐ聞こえる時代・・
    ・・( ^ω^)・・・

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