ブログ記者によるオンライン新聞 グッチーポスト

The Gucci Post [ぐっちー編集長の金融・経済を中心としたオピニオンブログ News Paper]

2017/05/18 12:15  | コラム |  コメント(0)

春の亡霊③

扉を入ると・・大広間だった。
二階までの吹き抜けになっていた。木製の格天井が空間を引き締めている。踊り場で息抜きをした・・広い木製のゆるい階段が・・高い二階に繋がっている。
壁の半分は・・鹿の剥製が隙間なく・・何かの模型のように突き出ている。残りの半分は様々な武器と紋章を描いた盾が・・これも隙間なく掛けられている。ここの主が軍人貴族なのは分かった。階段が寄り添う壁には・・この館の主達の肖像画の群が・・客達を迎えて見下ろしている。

僕達が・・この空間と貴族的デコレーションに慣れるまで・・管理人は黙って待っていた。
「教会は何処にありますか」
マエストロが職業的な・・冷静な口調で尋ねた。管理人は自分の後ろの壁を・・掌で示した。半円形石組に囲まれた・・目立たない木製扉を掌で示した。
管理人は恭しく扉を開けると・・電灯スイッチを押した。暗闇から部屋が浮かび出た。
「ここが礼拝堂です」
厳かに・・管理人はガイドのように告げた。礼拝堂には窓が無かった。狭くも広くもない部屋だった。丸い三段の輪に嵌められた・・多くのろうそく型電球が輝いていた。
正面が祭壇になのだろう。白い石灰の壁が・・キャンバスのよ
うに待っていた。
入ると三方の壁は・・殆んど壁画が仕上がっていた。砂漠の絵だった。砂漠の砂が赤みを帯びていたので・・サハラだと分かった。実際のサハラよりも・・赤さが強調されている。夕日を浴びた砂漠とも思えた。
マエストロは・・白い壁を触りながら・・
「ここに描けば良いのですね」
と念をおした。
「そう・・そう・・画家が仕事を放り出して出て行ったので」
管理人は忌々しそうに肩をすくめた。
「どうして」
後任の画家は尋ねる。初めて聞いたらしい。怪訝そうな顔になっている。
「分かりません。ただ・・突然・・朝出て行きました。それっきり・・仕事も済んでいないのに」
僕達の不審が広がらない内に・・管理人は泊まる部屋に案内してくれた。

二階だった。
階段の踊り場の壁に・・初代男爵の大肖像画が掲げられている。鎧甲を身に纏った男爵は・・逞しい大柄の男で・・こんな男と・・切り結ぶのは御免被りたいと・・絵を見ただけで騎士達はを感じただろう。ふてぶてしい顔には・・刀痕が走り・・眼の光は凶器を感じさせた。兜を切り落とした頭のように・・抱え込んでいた。
二階はギャラリーになっていた。雨天や雪の場合・・外の代わりに・・ここを散歩できるように・・長く造られてある。窓が並び・・森も一望出来る。雨の日の散歩も楽しいだろう。
僕が与えられた部屋は・・広く天井も高く・・博物館に泊っている気分になる雰囲気だった。木製の大きなベットには・・天蓋が付いていて・・一人で寝るのは勿体ないとまず感じた。
窓からは・・かなり大きな池が見下ろせた。
「これはいいや」
僕は・・これから始まる10間貴族館の滞在経験に・・- 有頂天に
なって・・心も体も弾んでいた。

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