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2018/07/19 06:03  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

インデックス ファンドは市場をより非効率にする?!


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

1974年の夏、著名な経済学者でノーベル賞を受賞したPaul Samuelsonが、物議を醸す議論と展開した。 それは「殆どの株式売買者はマーケットから退場しなければならない。 たとえ、一番いいパフォーマンスのトレーダーですら、常に株式インデックスを常にアウト パフォームすることは出来ない」というものであった。こうした死に陥れるアドバイスがいい忠告であるからと言って、それに追随すればいいことにはならない。それに代わるものを立ち上げる必要があった。 それは、誰かがS&P500インデックスに単純に追随する低コストで低リターンのファンドを作ることであった。

翌年、当時出来たばかりの運用会社Vanguardは、Samuelsonのこの命題を取り上げ、個人投資家にインデックス ファンドを始めたが、その当時はこれが受け入れられることはなかったWall Streetは、こうしたファンドを「反アメリカ的」と言って批判した。 その運用残高はその後5年間で僅かにUSD18百万に過ぎなかった。 しかし、最近20年では、インデックス 投資は大いに繁栄した。この間、インデックス ファンドは、裁量運用するアクティブ ファンドの6倍以上の速さで残高を伸ばし、現在、多くの投資家が支払う手数料も収入対比僅か0.03%(年率)程度にまで低下している。

Samuelsonの提示したインデックス ファンドに関するこの命題は、「株式市場はどんな時も効率的である」ことの裏返しでもある。つまり、企業繁栄に関する如何なるニュースも即座に株価に反映される。 もし、そこに何らかの超過利益(棚ぼた)があるならば、それはのろまな投資家が支払うコストを賢い投資家のリターンとして反映されるだけである。 では、逆に、より多くの(のろまな)投資家がインデックス ファンドを買えば買うほど、市場はより非効率になってより収益機会が増えるのであろうか? あるいは、Samuelsonがトレーディングをやめるべきと考えているトレーダーたちにとって、よりもう儲かるチャンスを創造することは出来ないのであろうか? 実際には、その逆は十分にあり得る。 つまり、もし、インデックス投資が、下手なトレーダーに取って代わるならば、市場は非効率ではなく、効率的になり得る。

繰り返しになるが、どうしてそうなるかといえば、全体は部分、部分の合計であることを考えれば理解することが出来ることになる(つまりゼローサム ゲームある)。平均的な投資家は、平均的な株式投資しかできない。 一方で、市場の動きに対してアウト パフォームする投資家もいれば、そうではない投資家もいる。トレーダーは、正しい企業情報を得る為に大変な労力をかけ、それに基づいて株価を評価し、それを売買に反映させる。しかし、多くのミューチャル ファンドのパフォーマンスは、こうしたコストに見合わない。才能のある限られたトレーダーだけが、インデックスをアウト パフォームすることが出来る(少なくとも一定期間は)。 しかし、もし、彼らが常にそう出るならば、その運用管理コストは非常に高くつくであろう。しかも、そうしたファンドがスキルとしてではなく、常に幸運(運まかせのラッキー)であり続けなければならない。一般的な人々は、こうした違い(儲け続けることのできるファンドとそうでなファンド)を見分けることが出来ないのである。

低コスト インデックス ファンドには、別の利点がある。多くの投資家が既に結論を出していることであるが、インデックス ファンドがマーケットの価格にどのような影響を与えているだろうか? マーケットには、異なった意見を持ったアクティブ ファンド マネージャーが集まってトレードが成立している。 その一方で、インデックス運用はパッシブである。よく聞かれる懸念として、インデックス 投資がバブルを助長しているのではないかとの指摘がある。何故ならば、インデックス ファンドは、既に高くなっている人気のある株を更に買う事になるからである。これは、本来のパッシブ戦略としてのインデックスの理論から逸脱している。 インデックスはそれぞれの株価によって加重平均されている。もし、株価が上昇すれば、インデックスに占めるその株の割合も増加する。しかしインデックス全体の価値も増加してしまう(上昇したインデックスに見合割りを確保する為に再びその株を買う、所謂、買いが買いを呼ぶ形でバブルになる)。

もっとはっきりといえる懸念として、「ある株の急上昇を敬遠してアクティブ ファンドからインデックス ファンドに資金をシフトした時、何が起きるか?」といった問題がある。その株をアクティブ 運用からパッシブ運用にスイッチしたことによる実質的な効果は、急上昇した株を今度はインデックス ファンドで買う事になってしまう。ファンダメンタルズ運用と言われている年金運用者の多くが、インデックス指数に負ければ負けるほど、株価バブルが膨張する可能性がより大きくなる。当然のことながら、たとえインデックス ファンドが存在しなくてもバブルについて考える価値はある。しかし、我々が仮定している年金運用トラストは、(インデックス運用にシフトするのではなくて)代わりに最近まで勝ち続けていた別のファンドにシフトしているのかもしれない。 その事の方が、より一層バブルになりかねない。

恐らくインデックスの成長は現存の世界から株式トレーダーを追い出してしまった。それはあたかも、Samuelsonが期待したように、へたなトレーダーから仕事を奪うようなものであった。 だからと言って、様々な意見を持った投資家の株式売買がなくなることででもない。株の売買高は、これまでもずっと増加してきた。つまり、アクティブ トレーダーはよりアクティブになってきているのである。

彼らは、何故悩んでいるのであろうか?もし、インデックス投資で儲けることが出来るなら、アクティブ運用でマーケットをアウト パフォームする事は一層困難だからである。ましては、人々は、自らを二流あるいは平凡であると考えるのは人間の性質に反する(だれもそう思いたくない)。 よって、たとえ成功よりも失敗しそうな時であったとしても人々は試みるであろう。 Samuelsonは以下のように書いたことを想像してみて欲しい。 それは、 ある調査機関が、アルコール中毒患者の5%しか普通のアルコール摂取者になれないことを発見した。 彼(Samuelson)が言うには、「たとえその見解がしっかりとした根拠であったとしても、賢明な臨床医は、それが誤りであるかのように行動するであろう。 何故ならば、20人の内の一人を特定する事は決してできないし、それを試みたところで、今度は20人の内、5人が自滅してしまう(アルコール中毒に戻ってしまう)かもしれないからである(概念として正しいことが、必ずしも現実と一致しない。 ましてやそれを特定することもできない)。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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