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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/04/24 05:28  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

金融市場波乱のシグナル?!


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

金融市場を見ていると、まるでホラー映画を見ているようである。主人公は暗がりの中を一人で歩いている。床がキシキシと音を立てている。最近の「異様」なサインは、Libor(London Interbank Offered  Rate)
とOIS(Overnight Index Swap) のスプレッドが広がったことである。普段、このスプレッドは0,1%程度で推移しているが、最近、このスプレッドが0.6%にまで広がり、銀行マン達は非常に懸念を抱いている。

これらのスプレッドが広がった理由を考えてみると、Liborとは銀行が他の銀行に対して3か月間無担保で貸し出す金利である。一方で、OISは翌日の連邦準備銀行(中央銀行)の銀行貸し出し金利を予想した指数である。LiborがOISより金利が高くなったという事は、銀行が他の銀行に貸し出しするリスクが高まっていることを意味する(そのスプレッドの内、3.65bpはリーマン ブラザーズが破綻して以来広がったスプレッドである)。

更に市場関係者が既に神経質になって事がある。 去年の11月にイールド カーブ(各残存期間の国債金利を一本の滑らかなカーブで示したもの)が、突然、フラット化して彼らを驚かせた。 イールド カーブがフラット化という事は、国債の利回りが低下し、今後の経済成長が失速しインフレ率が下落する事を意味するからである。その後、今年の2月に、株式市場が急落し、所謂、「恐怖の度合い」と言われているボラティリティの指数(VIX)が急上昇した。

しかしながら、こうした不気味な音は、時として単に風の音に過ぎないこともある。以下の3つの説明によって、こうした事は心配に及ばない可能性がある。1つ目のイールド カーブから始めると、中央銀行が足元の経済成長拡大を受けて政策金利を引き上げたことでイールド カーブがフラットしたと言える。 その一方で長期的には経済成長の失速の懸念が残っている。確かにアメリカの最近の減税は、今の経済を刺激するかもしれない。 しかし「長期的に経済成長を刺激し続けるかは不透明である」と考える市場関係者が多い。

今回のVIXの動きから分かるようにボラティリティには様々な原因がある。ショックが株式市場を襲った時にはボラティリティは上昇する。トレーダーは、経済成長や将来の企業業績にとって悪いニュースに驚くかもしれない(ボラティリティが上昇する)。 同様に、彼らはいいニュースにも反応するかもしれない。例えば、賃金が上昇すると金利が上昇するからである。つまり、金利が上昇すると将来の企業業績から計算される現在価値は押し下げられるので株にとって悪いニュースとなる。

Libor-OISについて考えられる一つの理由として、これまでクレジット デフォルト スワップ(投資家が銀行倒産に対するリスクとして支払っているコスト)が殆ど上昇しなかった。 しかし一部の海外の投資家が、アメリが減税をし、より多くの政府支出を増やした結果、中央銀行が市中銀行への貸し出しを減額すると考えた結果、スプレッドが広がったのかもしれない。2つ目の可能性としては、企業減税が企業の投資を促進し、これまで銀行社債を買っていた企業が他の企業買収の為に金を銀行から借り、結果、銀行がLibor市場から資金を調達したからかもしれない。そして、何よりも、今年の始めの急落で、投資家は銀行社債を購入するよりももっとリスクの低い国債を購入し、そのことが銀行の調達コストを国債に比べて引き上げる要因となった。

以上、トレーダーが嫌気して急落を引き起こした3つの要因は、もっと広い観点に立てば、要は金融市場が引き締まっているからである。つまり、貸し出しが減少し、経済成長が失速する事を懸念しているのかもしれない。しかし、それは意図されたものである。つまりFedはこれまでの金融緩和にブレーキをかける為に、2年以上も前から計画的に金利を引き上げてきた。 尤も、その間、中央銀行が「バブルを引き起こしているかもしれない」と警鐘を鳴らしたにもかかわらず、市場はこうした警告を無視するように株価を押し上げてきた。 これは、金融があまりにも楽観的になり過ぎると、その反対が悲観的なり過ぎるようなものである。

そして、常にあった最も大きなリスクはFedがインフレ抑制の為に急激な行動を取る事であった(政策金利の急速に引き上げる事)。IMFは、4月18日に「市場は突然の金融引き締めに直面するかもしれない。その際、金利は予想を超えて上昇するかもしれない」と警告している。経済に対する脅威は、実は金融市場の片隅に隠れている可能性があり、それはワシントンDCの中で見つかるかもしれない(Fedの動向次第である)。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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