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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/01/11 05:59  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

目に見えない価値が如何に投資を変えてきたか!?


おはようございます。

年末の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

もし、あなたが投資銀行で株式アナリストとして働いているとすれば、あなたの仕事は明確である。各企業が出した決算書をかき集め、各業界の傾向を計量化し、将来の企業の収益を正しく予想する事である。もしこれが出来れば、あなたの顧客は喜び、あなたのボーナスはいくつもゼロのついた単位(多額のボーナス)となる。

しかしこうした努力はそれだけの価値があるだろうか? 最近、 Finacial Analyists Journalに発表されたFeng and Beruch Lev.のレポートではこうした疑問がなされている。著者は「投資家は、(アナリストに頼らなくても)全ての企業の次の四半期の収益を予測することが出来る。 また、投資家はアナリストのコンセンサスにある、あるいはそれを越えるパフォーマンスを上げる事も出来る」と述べている。また、株式を空売りする事も出来る(例えば、彼らの予想が期待されている企業収益を越えないと分かり、株価が下がることが予想される時である)。彼らは企業業績の発表前2か月前に投資する事が出来るし、四半期決算1か月後にはポジションを売る事が出来る(決算前後の売買制限を勘案しても収益を上げることが出来る)。

1980年代から1990年代までは、こうしたやり方(四半期決算2か月前に買う、あるいは四半期決算1か月後に売却するやり方)は、毎四半期に4%の超過利益を得る非常にいい方法であった。しかしこうした従来の投資とは違った収益機会は次第に下落し、最近では2%程度まで低下している。同様に年間の企業収益を完全に達成された企業見通しを予測できた時の超過期待収益も低下した(予測が当たってもその見返りとしてのリターンが低下した)。

それでも、企業収益を完全に予測できた場合に2%の超過利益を得ることが出来るのは魅力的ではある。故に多くの2流のアナリストや投資家が参加することによってこうした収益機会は益々下がった。

意地悪な質問として「どうして期待収益が低下するのか?」と言った問いかけがある。 ある本の著者は超過期待収益の低下は、ここ10数年、目に見えない投資の重要性が増大した為と述べている。つまり、ソフト ウエアであったり、トレードマークの開発などである。こうした投資は、価値の拡大の大きな要素となる。

会計士は、こうした価値の判断に四苦八苦している。もし、企業が目に見えない資産、例えば他の企業から特許等を購入する時、バランス シートでは資産に分類される。 しかし、もし彼らが、社内で目に見えない価値を開発した時、これは負債(コスト経費)に分類され、これらは収益から差し引かれる。著者が述べているように、企業が、買収などで新しい発明や商品などの企業戦略商品を購入した場合には、自社内で同様の発明や企業商品などの戦略を開発した場合に比べて収益や企業価値の拡大に直結しやすい」と指摘している。

結論として、この本の著者は「報告された企業収益だけは、もはや今後の会社の収益を測るよい手段ではなく、また、株価のパフォーマンスを表す有益なガイドにならない」と述べている。 このことをテストする為に、著者たちは、企業を見えない投資に基づいて5つに分類している。当然のことながら、企業が目に見えない投資をすればするほど、現在の企業収益予測から可能となる超過利益を割合は低くなる(現在の企業収益構造から予測できないものにより多く投資している為)。

このレポートから得られることは、Jonathan HasketとStian Weslakeによる新著とも相通ずるものがある。つまり、彼らは、その中で、現在の経済において、目に見えない資産に対する投資が、その企業の成長のカギとなることを示している。と同時に、この本では、2008年以降、各業界を代表する多くのリーディング カンパニーの低い生産性と、それ以降の目に見えない資産への投資の欠如が密接に結びついているとも指摘している。

問題は、目に見えない投資が溢れかえってしまう事である(収益に結びつけられないことである)。 例えば、ある企業が高価な研究と開発をしても、その果実は、別の企業に取られてしまうことがある。ごく僅かな企業だけが(グーグルのような企業だけが)、その目に見えない投資に行って得られるスケール メリットを達成することが出来る。機械や装置と違って、目に見えない資産に対する投資は、再販に限界がある(販売先が限定的である)。また、目に見えない投資によってビジネスが失敗するリスクもある。

このように、投資家にとっていいニュースと悪いニュースがある。 一面では、グーグルなどの企業収益が(目に見えない資産に投資した事によって)GDP対比でかなり高い水準にあることの理由になっている。理論的には、より高いリターンは、投資家を更に惹きつけるが、過当競争によって(株価上昇によって)期待収益が低下する。また、目に見えない資産に投資するのは困難なので、投資家は二の足を踏んでいる。その一方で、多くの企業家が目に見えない資産に投資するのを躊躇うのは、将来に対する成長の見通しが見えないことに起因する。成長株を探す投資家は、こうした選択の制限(限界)に直面する。しかし、そうした企業に限って誰からも非常に価値のあるように見える。1970年代初めに流行った人気50銘柄ほど多くないが、今は、人気5もしくは6銘柄がそうなっている(アマゾン、グーグル、テスラー、アップル、Facebookなど)。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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