プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2017/12/28 05:06  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

良いことは長く続かない?!


おはようございます。

今月に発行されたエコノミスト2018に掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

昔話に、接着剤でついたレンガ ブロックを引っこ抜く危うさついての話がある。 毎年、接着剤でついたレンガ ブロックを引き抜くが何も起きない。 しかし、ある時、余りにもそれを強く引き抜くと、ブロックが跳ね上がり、それがあなたを顔に当たる。

ある日、よく似たことが金融市場で起こるかもしれない。2009年以降、金融市場は中央銀行の大量の金融緩和の介入によって支えられてきた。短期金利は歴史的に低い水準にまで低下し、中央銀行の国債購入によって債券の利回りは低下した。株式市場は、時に乱高下する事があったが、高値を追求し、Bank of Americaによれば、2017年秋には、アメリカの株式市場は1987年~2000年まで13年続いた株価上昇の次に長い期間上昇を続けている。

ここにきて、中央銀行はこれまでやってきた資産買い取りの圧縮を始めた。それは骨の折れる仕事である。中央銀行は、接着剤でついたブロック(金融緩和のブロック)をあまり強く引き抜くことを望んでいない。アメリカ連邦準備は2015年12月に最初の政策金利を引き上げた。それが、バランス シートのサイズを引き下げる最初であった。ヨーロッパ中央銀行も2018年から毎月の国債買取り額の減額を行う。

こうした金融刺激策の削減は、世界経済が程よいペースで拡大していることを反映したものである。IMFによれば、2018年の世界経済は3.7%で拡大しそうである。発展途上国経済も、10年前の商品市場価格の下落によって引き起こされたトラブルの後、その後は上昇に転じている。 問題は、中央銀行の下支えなしに、世界経済が持続的に成長できるかどうかである。

その多くは、中国次第かもしれない。今、その中国は、当局が供給過剰の製造業の生産を調整しようとしており、金融危機に陥ることなく成長速度をより低く抑える政策転換を図っている。 アメリカの政治については、2017年1月にドナルド トランプが大統領になって以来、楽観主義者たちは減税とインフラ投資によって経済を押し上げると期待している。 その一方で、悲観主義者たちは、彼の保護貿易主義が世界を分断すると危惧している。実際の処は、彼自身は、そのどちらも殆ど実行していない。しかし中間選挙が2018年11月の行われ、共和党の政治家たちは何等かの政治を実行する必要があると感じるかもしれない。その際、移民を制限し、あるいは貿易面では投資家に歓迎されないかもしれない。更には、Robert Mueller氏による2016年の大統領選挙の際の司法当局の調査が何らかのサプライズ(驚くような事態)を投げかけるかもしれない。

地政学的な事柄が、市場を動かすかもしれない。イランや北朝鮮の核開発問題、周辺の島々を巡って中国とその周辺諸国の紛争、あるいは長引くシリアやイエメンの戦争等などがある。 ヨーロッパでは、イギリスのユーロ離脱問題が峻烈さを増すかもしれない。イタリアの選挙では、反EU勢力が力を付けるかもしれない。2017年のフランス大統領選挙では、人気取り主義の極右大統領が誕生するかもしれないと言われたMarine Le Pen氏が敗れた。しかし、同年夏のオーストリアやドイツの選挙では、まだ極右政党の勢いは残っている。1990年以降、投資家たちは、政治的な混乱要因は一時的なものに過ぎないとの結論に至っているようである。つまり金融市場は予期せぬことで売られても、その後は買い戻されてきた。そして20世紀後半の歴史では、こうした問題(予期せぬ政治的な問題)は必ずしも大問題にはならなかった。

毎年、金融市場は「悩みの壁(難しい相場)」を登らなければならなかった。そして2018年も、うまくいくかどうか試される。しかし、2018年はより困難になってきているように思われる。ある日、突然、債券利回りが上昇し始めるかもしれない(価格が下落するかもしれない)。そのことが、信用市場(より流動性の低い社債市場)に問題を引き起こす。投資家は、これまでより高い利回りを求めて、こうした流動性の低い債券市場に投資してきた。 しかし、彼らがこうした市場から脱出しようとしても流動性が低いためにそれが叶わないかもしれない。また、アメリカ株は、景気循環調整後のPERレシオが非常に高くなっており、その水準は、1920年代と1990年代以来である。 その後、この期間のいずれも株価は大きく下げている。更に、今、相当バブルになっているサインが出ている。それは、イニシャル コイン オファーリングと言ってこの新しい形の通貨形態は仮想通貨と言われ、匿名の相手と売買し、その決済はブロック チェーンによって保護されている。

2018年が強気相場になる為には、世界経済の成長が必要であり、インフレが、中央銀行が過度に政策金利を引き締めない程度に落ち着いていることが必要である。また、企業収益も引き続き堅調に推移しなければならない。フランスのソシエテ ジェネラルによれば、「アナリストたちは2018年前半のS&P500の企業の収益は10%程度と予想している」と述べている。投資家たちはこうした楽観的な見方から2018年を始めるかもしれない。しかし、こうした見方は、余りにも楽観的過ぎて信用に値しない。イギリスの作家Dickensのデビッド コッパーフィールドに出てくるMr Micawber氏(貧しいが、よりよい明日を信じて、いつも楽観的なことばかり言っている人)が「何かが、変わりそうだ(悪いことが起きるかもしれない)」と間違って言うかもしれない。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。