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The Gucci Post [ぐっちー編集長の金融・経済を中心としたオピニオンブログ News Paper]

2018/10/01 06:30  | by Konan |  コメント(5)

Vol.5: 内閣府月例経済報告と日銀金融政策決定会合2018年9月

皆さん台風大丈夫でしたか?ご無事をお祈りします。

今回は、数日違いで公表された先月の内閣府月例経済報告と日銀金融政策決定会合を取り上げます。両者の共通点や違いを見てみたいと思います。公表日は月例経済報告が14日、金融政策決定会合が19日でした。

以下では、現状評価と先行き見通しに分け、内閣府、日銀の順番で記載します。

(現状評価)
・全体:緩やかに回復している(内閣府)緩やかに拡大している(日銀) 
・個人消費:持ち直している(内閣府)振れを伴いながらも、緩やかに増加している(日銀)
・設備投資:増加している(内閣府)増加傾向を続けている(日銀)
・住宅建設(投資):おおむね横ばいとなっている(内閣府)横ばい圏内で推移している(日銀)
・公共投資:底堅く推移している(内閣府)高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している(日銀)
・輸出:持ち直しの動きに足踏みがみられる(内閣府)増加基調にある(日銀)
・輸入:持ち直しの動きに足踏みがみられる(内閣府)記述無し(日銀)

(先行き見通し)
・全体:緩やかな回復が続くことが期待される(内閣府)緩やかな拡大を続けるとみられる(日銀)
・個人消費:持ち直しが続くことが期待される(内閣府)(国内需要全体を総括して)増加基調をたどると考えられる(日銀)
・設備投資:増加が続くことが期待される(内閣府)
・住宅建設(投資):横ばいで推移していくと見込まれる(内閣府)
・公共投資:底堅く推移していくことが見込まれる(内閣府)
・輸出:持ち直していくことが期待される(内閣府)基調として緩やかな増加を続けるとみられる(日銀)
・輸入:持ち直していくことが期待される(内閣府)記述無し(日銀)

たった数日違いなのに、意外と差があると思われたかもしれません。

まず、内容に入る前に公表頻度について。内閣府の方は「月例」の名称から分かるように、毎月、大体中旬に公表されます。年12回の頻度です。日銀の方は公表頻度が減ってきています。日銀法改正(1998年4月)直後は、毎月2回近く金融政策決定会合が開催されました。それは大変ということで頻度が次第に下がり、年間14回で一旦定着しました。毎月1回に加え、4月末と10月末に展望レポートを決定・公表する会合が別途開催され、合わせて14回の計算です。3年ほど前からこれが更に減り、欧米中央銀行並みの年8回となりました。事前にホームページで日程が公表され、また、展望レポートの数は年2回(4月、10月)から年4回(1月、4月、7月、10月)に増えましたが、以前毎月出ていた「月報」が無くなったので、統計資料を見るうえでは大分不便になりました。

さて、内容面での最大の違いは、内閣府の総括判断が「回復」なのに対し、日銀は「拡大」であることです。因みに日銀は昨年4月から拡大の言葉を用い始めています。この違いについて憶測を交えて解説すると、日銀にはある種の言葉使いの理屈があるようです。以前「需給ギャップ」という言葉を解説しました。現実の需要が日本経済が持つ供給能力を上回るとギャップがプラス、下回るとマイナスですが、景気が良くなる過程のうち、ギャップがマイナスからゼロに戻る局面を「回復」、ゼロからプラスに移行しプラス幅が拡大する過程を「拡大」と呼んでいるようです。他方、内閣府の方は過去の表現をホームページ上で確認してみました。見落としがあるかもしれませんが、かなり長きにわたり「拡大」という言葉は使われていない印象です。経済企画庁時代、バブル景気の頃は「拡大」と呼ばれましたが、バブル崩壊後、例えば小泉政権からリーマンショック前に至る長い景気回復局面(通称いざなみ景気)でも拡大という言葉は使われず、「回復」に終始しました。確かに昨今の実感を伴わない回復を拡大と呼ぶことは、政治家からみると疑問符が付きかねず、表現を抑制しているのではないかと思います。

もうひとつの違いは、内閣府は統計に忠実に「足踏み」などの現状評価を行います。他方、日銀の方は月々の統計の振れにある程度目をつぶり、トレンドを評価する傾向があるように思います。輸出の評価にこの差が端的に表れています。私は例えば「統計をみると足踏みしているようにみえるが、他の事情を勘案すればトレンドは不変で、先行きは回復が続く」という感じの説明が正直で良いと思うので、どちらかと言えば内閣府風を好みますが、好き嫌いが分かれるところでしょう。

そのうえで、内閣府も日銀も判断にバイアスが加わる点は共通です。内閣府は、政府の経済政策が余りに上手くいっていない印象を与えることは避けたいはずです。ただ、例えば災害復興のための補正予算を正当化することも必要で、そうした配慮も垣間見えます。9月も「相次いでいる自然災害の経済に与える影響に十分留意する必要がある」との一文が追加されています。日銀の方は、黒田総裁になって以降、景気を強めに評価するバイアスが強まった印象です。何と言っても、2%の物価安定目標の達成が程遠い中で、「2%目標達成に向けてモメンタムは確り働いているのだ」と言わざるを得ないので。

さて、今回から月例経済報告や金融政策決定会合を紹介する際、具体的な統計指標を1つ2つ解説するよう心掛けます。ぐっちーのメルマガは、ぐっちー自身の奔放な人柄と対照的に様々な米国経済指標を丹念に追っています。私はその域にとても及びませんが、私自身が日本経済を見る際に大事にしている指標、ないし、流れが変化しいる指標を紹介するイメージです。今回は上記のGDP・需給ギャップと、(個人的には余り重視していませんが)世間で話題になる機会が多い景気動向指数を取り上げます。

まずGDP・需給ギャップ。下記に内閣府と日銀双方のURLを付けました。理由は不明ですが内閣府はGDPギャップ、日銀は需給ギャップと呼びますが、同じものです。このギャップのうち需要はGDP統計を用いますが、供給能力は推計を伴うため、内閣府と日銀の間ではギャップの計測が異なります。供給能力の伸び率である潜在成長率は、内閣府が+1.1%、日銀は+0.85%と内閣府がやや高めの推計です。ギャップの直近値は、内閣府+0.3%(表の一番左の列「GDPギャップ」の2018年第2四半期)、日銀+1.7%(表の一番左の列「需給ギャップ」の2018年第1四半期)です。これだけ見るとかなり評価が異なるように見えますし、日銀の方は2016年第4四半期にプラスに転じて以降プラス幅が拡大しているのに対し、内閣府はむしろ昨年後半の方がプラス幅が大きいなど、気になる違いがあることも事実です。潜在成長率の推計値が高い内閣府の方が供給能力を高くみるので、需要とのギャップが小さくとどまることが違いの背景ですが、正直言ってどちらの潜在成長率の推計が正しいか判断がつきません。ただどちらの推計によっても、ここ6四半期(1年半)ほどプラスのギャップが維持されていることは共通です。プラスのギャップは、残業など無理をしないと需要に供給が追い付かないことを意味しますので、雇用や賃金にも良い影響を持つはずです。こうした意味で経済全体の温度感を示す重要な指標として意識して下さい。

最後は景気動向指数。個人的には余り見ない指標ですが、今回紹介した理由は「いざなみ景気越え」など景気回復期間の長さは、この指標に基づく景気の山谷判断に依るためです。個人的に余り見ない理由は、指数(一致、先行、遅行と3系列ありますが、このうち一致指数)算定に使われる元データが、鉱工業生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、所定外労働時間指数、投資財出荷指数、商業販売額(小売業、卸売業)、営業利益、有効求人倍率と、昔から作られ継続性がある指標だけにやむを得ないのですが、やや古風な印象を持ってしまうためです。なお、いざなぎ景気は57か月、バブルは51か月、小泉政権頃の回復(通称いざなみ景気。内閣府の資料上はいざなみの呼称は用いられていません)は73か月と最長、今回は2012年11月が谷なのでもう70か月でしょうか。近々「いざなみ越え」が話題になりそうです。

5 comments on “Vol.5: 内閣府月例経済報告と日銀金融政策決定会合2018年9月
  1. 健太 より:
    わからないですが

    >さて、内容面での最大の違いは、内閣府の総括判断が「回復」なのに対し、日銀は「拡大」であることです。因みに日銀は昨年4月から拡大の言葉を用い始めています。

     こんなことは用語の問題で、実際の経済についてはどうでもいい事ではないでしょうか。軍事作戦の結果を評価するときに、どのようにするか?
    色々な方法があると思うが教科書的には戦略的判断と戦術的判断と在ります。
    有名なものは珊瑚海海戦でしょう。帝国海軍は空母準鷹が沈み、翔鶴が大破、アメリカはレキシントン沈没、ヨークタウン大破、後駆逐艦が沈んだ、戦闘は我が国の勝ちだが、ポートモレスビー攻略は断念ですから、戦略的にはアメリカの勝ちだとの評価です。
     庶民は給料が上がる実感と実際の手取りが増えれば景気がいいと見る。
    それだけです。どのような経済見通しをしても政府財政をどのようにするかに過ぎない。ことは之だけでしょう。経済が拡大すれば財政再建ができることでしょうが財政再建は税収が増えて支出が減ればいい事です。その税収が経済の拡大に依存することではない事が現在の大きな問題ではないか。
     GDPが拡大しないときに税収構造を変えることは金の行く道をかえることに過ぎない。
     素人が思うにいくら経済分析をしても、<ああそれだけですか>でおしまいと思う。俺の給料が増えないとどうでもいい事です。世俗的には<能書きを書いているに過ぎない>でしょう。
     今必要なことは金の行く先をかえる、制度改革で税収を増やすことではないか。またそれでないと増えないのではと思う。
     企業の内部留保が帳簿上350兆在ると言うがそれは円なのかドルなのかで大きく違う。たぶんドルではないかと思う。それならそれは内需へと向かうことはないから金があっても意味がない。
     とにかく、金が余っていることは確かだから、それを掠め取る方法を政府は考えることだと思う。 
     電波のオークションはそのひとつの手で、色々見ると一年で2兆円くらい入るのではと思う。GAFAは電波をつかって、利益を上げているから、そこから掠め取ればいいと思うのは素人考えですか。
     NHKも電波発信会社にして、受信料は無しにして、時間帯ごとに放送権を売ればいい、すると受信料分は政府に入るのではと思う。税収が政府に入るのではと思う。
     そのほか義務教育というより学校設立条件を自由にして、政府は小学校学力検査試験、中等学校学力試験、高等学校学力試験を試験料をとって、年二回位すれば、義務教育に使っている二重出費はなくなり、親も助かる。
    そして政府は高等教育のみに主力を注げばいい。
    つい出にかきますが裏口入学は別に法律違反ではないでしょう。大学が勝手に試験をしているだけです、なぜするかと言うの大学の定員以上の生徒が応募するからです。それだけに過ぎない。
     ここは我が国の大学が民間から生じたものではない事、つまり大学の生い立ちがアメリカとは違うから其処は考えることだと思う。
     そのほか色々あるのではと思う。
    経済の数値は数値として把握する必要はあると思うが、内実それらはどうでもいいことだと素人ながら思います。つまりいくら分析しても、庶民の給料が上がらなければ、意味がない。

  2. ペルドン より:
    konanさん

    分かりやすい分析ですが・・
    読みづらい。
    必ずしも文法通りに・・文節を作る必要がないのでは・・?
    もっと・・
    ブロックを小分けにされた方が・・読者としては読み易くなる。
    そんな気がします・・余計なお世話ですが・・・( ^ω^)

  3. 那須の山奥の兄ちゃん より:
    素晴らしい

    そもそも
    その文節の違いの重要性など
    認識していても

    分析までしている人などは
    まれ

    こういうことも考えなければいけないのだ
    と考えさせられる文章でした

  4. 下北のねこ より:
    久しぶりに理解できたよ。

    「プラスのギャップは、残業など無理をしないと需要に供給が追い付かないことを意味しますので、雇用や賃金にも良い影響を持つはずです。こうした意味で経済全体の温度感を示す重要な指標として意識して下さい。」

    なるほどです。プロの分析者はこういうところを見るのか。とってもポイントがわかりやすい記事ですね。というか、今回の記事は急に私にも驚く(ノ゚ο゚)ノくらいわかるレベルです。感動です。(ノ´▽`)ノ

  5. ペルドン より:
    やはり・・

    景気を揚げる為には・・
    個人の収入を上げるには・・
    企業への課税を以前のような税負担にして・・
    人件費を増やし・・交際費などで消化させ・・
    消費税を下げる以外・・
    ないと思われますが・・
    今の税法と消費税に頼っているようでは・・
    国民の貧困化は避けられないと思いますが・・・
    ( ^ω^)

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