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2013/10/28 09:00  | by Konan |  コメント(2)

Vol.216: 日銀の金融システムレポート


簡単に、先日日銀が公表した金融システムレポートについて。

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr131023.htm/

半年に1度公表されるこのレポートは、過去半年を振り返り、日本の金融システムや金融市場で起きたことを概観し、課題を指摘するものです。このコーナー開始当初は、レポート公表のつど紹介してきましたが、面白みに欠けてきたため紹介を止めました。ただ、異次元緩和との関係で金融機関行動にも注目が集まるようになった関係で、前回4月公表分を紹介し、今回も引き続きという流れです。

異次元緩和との関係では、次の2点が注目されているように思います。

(1)異次元緩和は、いわゆる金融機関のポートフォリオ・リバランス効果:単純に言えば、日銀が銀行から国債を大量に買う結果、銀行の手元から国債が消え、現金(正確には日銀への当座預け金)が増えることになりますが、銀行がこの現金を貸出や外国証券に回せば、企業活動の活発化や更なる円安効果をもたらす可能性があることです:に期待しています。これがどの程度発揮されてきたのか。

(2)異次元緩和が成功し、物価上昇率が上がると、必然的に金利が上昇します。この金利上昇に金融機関が耐えられるか:耐えられないとすれば、最悪の場合、金融危機の再来になりかねません。

第1の点に関する日銀の見立ては、以下の通りです。

「企業・家計を取り巻く金融環境は、前回レポート時と比べると、より緩和的になっている。社債・株式など金融資本市場を通じた金融仲介は、活発になっている。金融仲介機関の活動をみると、量的・質的金融緩和のもとで日本銀行による国債買入れが増加するなか、金融機関(銀行・信用金庫)の国債保有残高は減少した。一方で、日銀当座預金が増加したことに加えて、貸出が伸びを高め、海外資産も増加しているため、金融機関の運用資産は全体として伸びを高めている。貸出の伸びは大企業向けが中心であり、中小企業向けは総じてみるとなお弱めであるが、足もとでは中小企業向けについても幾分前向きな動きがみられつつある。この間、保険会社等の運用動向には、大きな変化はみられていない。」

ポートフォリオ・リバランス効果が発揮されてきた兆しはあるが、まだ十分とは言えない、といった感じでしょうか。

第2の点に関する日銀の見立ては、以下の通りです。

「金融機関(銀行・信用金庫)では、全体としてみると、規制上の自己資本比率、リスク量対比でみた自己資本、いずれの観点からも、資本基盤は充実しているとみられる。自己資本は、内部留保の蓄積等から充実が進んでいる一方、リスク量は信用リスク量や金利リスク量の減少等から抑制されている。金利リスク量は、これまで増加傾向が続いていたが、今年度に入って減少に転じた。信用リスク量の減少は、金融機関の資産内容の改善などを反映している。もっとも、個別にみると、資産内容の改善が遅れている先もみられる。その他のリスクも含め、リスク量対比で資本基盤が脆弱な先も一部にみられる点には留意が必要である。」

「マクロ・ストレス・テストによれば、大幅な景気後退が生じるケースや景気の改善を伴わずに金利が大きく上昇するケースを想定しても、金融機関の自己資本は相応の水準に維持される。ただし、金利上昇のケースでは、その背景や程度、速さ次第で、金融機関の資金利益や投資行動、企業・家計の債務返済負担などに大きな変化が生じ、金融機関の収益や自己資本に想定を超えた影響が及ぶ可能性がある。さらに、個別にみて、リスク量対比で資本基盤が脆弱な金融機関では、経済・金融面に大きなショックが生じた場合、自己資本比率が大きく低下する可能性がある点にも、留意が必要である。」

難解な文章で理解できた自信はありませんが、現状は大丈夫、景気の改善を伴わない悪い金利上昇のケースでも金融システム全体の危機には至らない、ただその場合、個別金融機関の中で心配な先は出てくるかもしれない、といった感じでしょうか。

今回は以上で。

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2 comments on “Vol.216: 日銀の金融システムレポート
  1. ペルドン より
    一寸先は闇

    と言えば・・
    身も蓋も無いか・・(笑)

    難解な判決文に・・比べれば・・平易・?
    弊衣・・ならば・・問題・・・(笑)

  2. パードゥン より
    米国に義援金が行って

    一旦上がった米国長期金利が再び下がって、住宅が売れ直し始めて来春には米国景気が良くなって、それでもって終に日本の物を買うようになってくれるという、”風が吹くと桶屋が儲かる”のような感じにはなってきましたね。  まだるっこいですが。  何故、直接、日本の企業には貸さないのかは”隣の芝生は良く見える”?
    それともアメリカへの貸し出しは絶対に金融庁から不良債権扱いにされないから、銀行としては安心?

    問題は、日本から海外へ輸出するものが少なくなっています。 現地生産で。
    やっぱり米国債を購入して、金利をもらうくらいしか方法がないか。
    日本国債を発行して米国債を購入して、日本国債は増税で償却が素直?

    だんだん、人力さん風になってきちゃいました。

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