ブログ記者によるオンライン新聞 グッチーポスト

The Gucci Post [ぐっちー編集長の金融・経済を中心としたオピニオンブログ News Paper]

2018/08/13 00:00  | 今週の動き |  コメント(2)

今週の動き(8/13~19)

お盆ということでお休みの方も多いと思いますが、世界情勢は相変わらず激しく変化しています。

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先週の動き
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8/4(土)
・トランプ大統領から金正恩朝鮮労働党委員長への書簡をキム駐フィリピン米国大使が北朝鮮の李容浩外相に手渡す(シンガポール)
・ベネズエラのマドゥロ大統領が演説中に同大統領の暗殺を狙ったとみられるドローンが爆発(カラカス)

8/7(火)
・USTRが中国製品279品目(160億ドル相当額)に対する25%の追加関税を8月23日に発動すると発表
・イラン制裁法(12年国防授権法)の効力が復活
・EUが米国のイラン制裁再発動への対抗措置(ブロッキング規則)を発動
・米政府がロシアにジョージアの親ロ派地域であるアブハジアと南オセチアからの撤退を要求
・中間選挙の予備選(カンザス、ミシガン、ミズーリ、ワシントン)
・オハイオ州下院補選
・サウジアラビアがカナダからの人権活動家の解放要求を受けカナダとの新規の貿易・投資取引を停止すると発表
・コロンビアの大統領にイヴァン・ドゥケが就任

8/8(水)
・中国商務省が米国製品333品目(160億ドル相当額)に対する25%の追加関税を8月23日に発動すると発表
・米政府が英国で3月に起きた元ロシア情報機関員らの毒殺未遂事件についてロシア政府が神経剤を使用したと断定し新たな制裁を科すと発表
・ロシアを訪問したランド・ポール上院議員がトランプ大統領からプーチン大統領に宛てた書簡をロシア政府に届けたと発表
・翁長沖縄県知事が死去

8/9(木)
・北朝鮮外務省が米国との非核化交渉について米政府を批判する報道官談話を発表
・イランのロウハニ大統領が北朝鮮の李容浩外相と会談(テヘラン)
・日米通商協議(FFRの閣僚級協議)(ワシントンDC、~10日)

8/10(金)
・トランプ大統領がトルコから輸入する鉄鋼とアルミにそれぞれ50%、20%の追加関税を課すと表明
・トルコ外務省がトランプ政権の鉄鋼・アルミの追加関税引き上げの表明を受けて「必要な対抗措置を講じる」との声明を発出
・米ロ外相電話会談
・イラク選挙管理委員会が5月の総選挙の再集計の結果を発表(結果は変わらずムクタダ・サドルの政党連合が勝利)
・インドネシアのジョコ大統領と野党党首のプラボウォ氏が19年大統領選挙の候補者に登録

8/11(土)
・中間選挙の予備選(ハワイ)

先週のどこか
・北戴河会議(推測)

●トルコリラの急落

トルコリラが対米ドルで一時約2割(前日比)下落して最安値を更新。年初来の下げ率は4割に達しました。

しかもリスクオフのため他の新興国の通貨にも飛び火し、メキシコペソとロシアルーブルも急落。さらにトルコに多額の融資を行っている欧州の銀行にも打撃になり、ユーロも大幅に下落。欧州の金融危機というシナリオすら浮上してきました。

トルコリラの急落の最大の要因は米国との衝突です。

米国との関係は、以下の記事で述べてきたとおり悪化の一途をたどっていましたが、この2週間にかけて状況はさらに深刻化。

「米・トルコのビザ発給停止」(17/10/19)
「米・トルコ外相会談とクルド軍の撤退」(6/11)

トルコが米国人牧師ブランソン氏を拘束したことをトランプ大統領が猛烈に批判し、トルコ閣僚の米国内資産を凍結しました。そして先週、米国はすでに発動していた鉄鋼・アルミの追加関税を2倍に引き上げる措置に及びました。

トルコは足元でインフレが16%近くに高進。経常赤字もGDP比6%に拡大しており、マクロ経済的にも不安が生じていたところです。にもかかわらず金融引き締めに転じることをエルドアン大統領が阻止していたことも不安に拍車をかけました。

「トルコの政策金利の据え置き」(7/30)
「今週の動き(8/6~12)」(8/6)

ブランソン氏が解放されなければ米国はさらなる制裁を発動するでしょう。米国に対する強硬な姿勢と緩和的な金融政策が続けば、通貨危機に陥る可能性は否定できません。エルドアンにとっては正念場になります。

トルコについては現在のエルドアン政権に至るまでの経緯を以下の記事で説明してきましたが、今週、いよいよエルドアンの新時代の展望に入ります。その際、トルコリラの展望についても解説します。

「トルコ現代史(1):アタテュルクとエルドアン」(7/20)
「トルコ現代史(2):エルドアンの憲法改正」(8/3)
 
●サウジ・カナダ関係の悪化

サウジアラビアで逮捕された人権活動家の釈放をカナダが求めたところ、サウジはこれに猛反発。カナダ大使の追放と自国大使の召還、カナダとの新規の貿易・投資の停止、国営航空のカナダ便の停止といった激しい措置に及びました。

サウジがこのような攻撃的な対応をとる背景には何があるのか。その影響を含め解説します(※メルマガに限定)。

●米中の「貿易戦争」

USTRが中国製品279品目(160億ドル相当額)に対する25%の追加関税を8月23日に発動すると発表。これを受けて中国商務省が米国製品333品目(160億ドル相当額)に対する25%の追加関税を同日に発動すると発表しました。両国とも6月に発表した決定措置を実行したものであり、これ自体に驚きはありません。

「米中の『貿易戦争』」(6/18)

米中の思惑ですが、基本的な構図は以下の記事で述べた分析から変わっていません。米国は中間選挙をまたぐ長期戦の構えであり、中国は先週から開催されているとみられる北戴河会議を考慮して強硬姿勢に傾斜しています。

「米中の『貿易戦争』と中国の経済政策の転換」(8/6)
「『貿易戦争』の長期化」(7/30)

一方、今回注目されたのは、中国が発表した対象品目が6月に発表した品目と大きく変わっていること。当初含まれていた原油が除外され、代わりに自動車関連製品への適用が拡大されました。一方で当初除外されていたLNGは含まれています。

ここで思い出されるのは、5月に通商協議を経て米国が貿易戦争をいったん「保留」したとき、中国が米国製品の輸入を拡大することで両国は合意したことです。このとき特に重視したのがエネルギーすなわち原油とLNGの輸入でした。この点をふまえて解説します(※メルマガに限定)。

「第2回米中通商協議」(5/23)

●イラン制裁法の復活

予定どおり制裁法が一部復活しました。これについては先週の解説を確認下さい。

「米国とイランの対立と対話」(8/6)

EUは対抗措置として「ブロッキング規則」を発動し、欧州企業がイランとの取引を中止することを防ごうとしています。これまで発動されたことがない措置で、国際法的にも経済学的にもどのように評価できるか興味深いところなのですが、現実としてどれほどの効果があるのかは疑問です。

イランをめぐって米国と欧州・日本の立場がそろわず、一定の緊張が生じるのは今に始まった話ではありません。それでも「EU+3(米中ロ)」の枠組みを中心に米欧は基本路線において足並みをそろえてきました。それが、ここまで正面から衝突し、欧州が米国の攻撃から全力でイランを守ろうとすることになるのもすごい話というか、世界情勢の激動を感じるところです。

●オハイオ州下院補選

オハイオ州第12選挙区の下院補選で注目すべき動きが起こっています。

共和党のトロイ・ボルダーソンと民主党のダニー・オコナーが争い、ボルダーソンが勝利を宣言しましたが、その差はわずか0.9ポイント。暫定票と不在者投票の開票を待つ必要があり、いまだに結果は確定していません。

たかが下院の一つの選挙区で接戦になっていることが気になるのかと思うかもしれませんが、この選挙の結果は非常に重要な意味をもっています。この点を解説します。

なお、中間選挙の予備選もそうですが、こうした選挙結果の一つ一つの意味を緻密に把握することが米国政治の潮流を読み取る上で非常に重要です。これまで本メルマガでは、ジョージア州下院補選、バージニア州知事選、アラバマ州上院補選、ペンシルバニア州下院補選、そして中間選挙の予備選と細かくフォローしてきました。

「ジョージア州下院補選」(17/6/27)
「バージニア州知事選」(17/11/7)
「バージニア州知事選」(17/11/13)
「アラバマ州上院補選」(17/12/19)
「ペンシルバニア州下院補選」(17/3/18)
「中間選挙の予備選」(6/18)
「中間選挙の予備選」(7/2)
「中間選挙の予備選」(7/9)
 
一つ一つから様々な要素と風向きの変化を読み取ることができるので、できれば各該当記事を読んでいただきたいですが、これらの結果を踏まえた上で現時点で注目すべき大きなポイントも説明します(※メルマガに限定)。

●インドネシア大統領選挙

19年4月の大統領選に向けて、ジョコ大統領がイスラム穏健派組織「ウラマー評議会」のマアルフ・アミン議長を副大統領候補として出馬登録し、野党グリンドラ党の党首プラボウォ・スビヤントはジャカルタ特別州副知事のサンディアガ・ウノを副大統領候補として出馬登録しました。

大統領選の展望は以下の記事で述べましたが、ジョコ対プラボウォの対決になり、ジョコの支持率が大きくリードしていることからジョコ勝利の可能性が高いが、イスラム保守主義の台頭がどこまでプラボウォに有利に働くかが気になるところでした。

「インドネシアの課題とジョコ政権の改革(2)」(4/11)

ジョコがマアルフを副大統領候補にした理由がイスラム保守主義対策であることは明白です。正直、私を含む多くのインドネシア・ウォッチャーにとって驚きの決定でしたが、ジョコも直前まで相当迷った上での判断だったようです。

マアルフは、上記記事で述べたジャカルタ特別州知事だったバスキ・プルナマ(通称アホック)が宗教侮辱罪で追い落とされるときにはアホックを批判する側に回っており、アホックを擁護するジョコとは異なる立場でした。しかし、ウラマー評議会はインドネシアのイスラム教を代表する主流団体なので、ジョコとしては穏健なイスラム主義を志向する上でパートナーにできると考えたのでしょう。

これをもってジョコが勝ったとしても、インドネシアのイスラム保守化が進む・・という短絡的な論評を見かけますが、個人的にはそこまで大きく動くとは感じません。そもそもジョコは前回の大統領選でも「敬虔なイスラム」という宗教色をそれなりにアピールしていました。インドネシアのイスラムの穏健さは強く根付いており、アホックの事件に対しても「行き過ぎ」という感覚を多くの人が抱いています。このへんは上記記事をご確認下さい。

一方、プラボウォが選んだサンディアガは新興財閥のトップです。資金面でのサポートとプラボウォにはない若く国際的・都会的なイメージによるアピールが期待されたのでしょう。

ユドヨノ前大統領率いる民主党はプラボウォを支持し、連合でジョコに対抗することを決定しましたが、それでもジョコに対抗する力は十分ではなく、ジョコ優位の予測に変更はありません。

●日米通商協議(FFR)

第1回協議ということで、日米FTAの実質的な議論には入らず、次回協議を9月に実施するのでそこまで持ち越しということになりました。9月下旬に国連総会の機会に予定される日米首脳会談の直前のタイミングになります。

以下の記事で述べたように、日本側としては日米FTAの議論がスタートすることをできるだけ先送りしたい事情があります。それを踏まえて今回の結果を考察します(※メルマガに限定)。

「日米通商協議」(8/6)

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今週の動き
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8/12(日)
・シャーロッツビル衝突事件から1年

8/13(月)
・南北高官協議(板門店)

8/14(火)
・中間選挙の予備選(コネチカット、ミネソタ、バーモント、ウィスコンシン)

8/15(水)
・終戦記念日
・韓国の光復節
・北朝鮮の解放記念日
・パラグアイ大統領就任式(アスンシオン)

8/18(土)
・アジア競技大会(ジャカルタ等、〜9/2)

今週のどこか
・北戴河会議(推測)

●米・トルコ関係とトルコの外交・金融政策

こうして見ると大きなイベントが少なく世界も何やらお盆モードな感じですが、今週から来週にかけて、おそらく米・トルコ関係とトルコの外交・金融政策が大きく動きます。

考えられるのは米国の追加制裁、トルコのブランソン氏への対応の軟化と緊急利上げですが、最新の情報を押さえつつ、今週解説します。

●シャーロッツビル衝突事件から1年

米国を揺るがしたシャーロッツビルでの衝突事件から1年が経ちました。シャーロッツビルでは8月11日に追悼式典が行われ、トランプ大統領はツイッターで「あらゆる人種差別を非難する」として団結を呼びかけました。

「シャーロッツビルでの衝突とバノンの解任」(17/8/21)
「シャーロッツビル事件と南部の文化」(17/8/24)

しかしこの1年のトランプの言動を見ると、「白人のアイデンティティ」を強調し、それを支持層の動員に活用する姿勢に変わりはありません。

「The Institute for Family Studies」が8月9日に発表した調査によれば、「オルト・ライト(白人ナショナリズム)」に共感する人々には、白人のアイデンティティが重要と認識し、白人は団結する必要があり、白人は米国において犠牲者となっている・・という3つの信念をもっている傾向があり、米国の白人の6%がこれに該当するとのことです。

わずか6%に過ぎないのが現実ですが、一方、おそらくこうした感覚を共有する人々が増えており、それを大統領という国家のトップに立つ人間が助長している・・ということも見逃せない現実です。20年前の共和党ですらここまで白人アイデンティティを強調する人はまれでした。

●終戦記念日

8月15日は日本にとって終戦記念日ですが、韓国にとっては独立記念日、北朝鮮にとっては「解放記念日」です。ちなみにインドネシアも日本の降伏直後に独立を宣言しており、8月17日が独立記念日になっています。

韓国では文在寅大統領が演説を行います。北朝鮮の非核化に向けた米朝交渉は進展している様子がなく、北朝鮮は再び強硬なレトリックを米国に向けるようになっています。その中で、文在寅は自身の外交力をアピールすべく、第3回南北首脳会談の開催を含め南北融和に向けてメッセージを打ち出すことが予想されます。

トランプ大統領は中国、NAFTA、イラン、そしてトルコ・・と他の問題で忙しく、中間選挙に向けたアピールとして北朝鮮では十分なものを得たとみている節があるので、とりあえず表には出てこないとみられます。しかし、中間選挙が終わり、これらの案件が収束すれば、再び前面に出て、恫喝姿勢に戻るのでは・・という予感がします。

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あとがき
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2 comments on “今週の動き(8/13~19)
  1. ペルドン より:
    北戴河会議とトルコ

    北戴河会議が以前程力があるか否か・??
    開かれる前に・・習主席は政治局常務委員会の会議を開いたとの噂。王 滬寧が下を向いたままだったとか・?!
    米中貿易戦争で・・又中国が強気に出たのは・・李克強首相に委ねられた変化とも窺える。その結果悪化すれば・・首相の責任が問われる。

    トルコ・・トランプ大統領の配下にする為の圧力。何処までエルドアン大統領が耐えられるか・・・?!
    ( ^ω^)

  2. KB より:
    世界情勢の楽しみ方

    久々のサウジの王子。興味深く読みましたが、なかなかいつも順風満帆というわけにはいかないのですね・・・。
    うまく、外交問題を使いながら、これからどう国をまとめていくのか、アラムコの件も含め、とても参考になりました!

    中間選挙についても、こうやって長年つぶさに観察していく、というのはとても根気のいる作業ですが、毎回とても緻密です。
    確かに、こうして少し時間軸を長く、俯瞰してみると、変化が感じられるものですね。今回は大きなポイントも3つ分かりましたし、あと2か月楽しめそうです!!

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