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2017/01/06 00:00  | 米国 |  コメント(4)

トランプ政権人事:国務長官、国家通商会議


少し時間が経ってしまいましたが、トランプ政権の展望について。まず、前回の「トランプ政権人事(国防長官)」記事から新たに指名された人事は以下のとおりです。

(大統領府)
⚫︎国土安全保障・対テロ担当補佐官 トーマス・ボサート コンサルティング会社経営
⚫︎国家安全保障担当副補佐官 キャスリーン・マクファーランド FOXのコメンテーター
⚫︎NSC首席補佐官 ジョセフ・キース・ケロッグ 退役陸軍中将
⚫︎NSC戦略広報上級部長 モニカ・クローリー FOXのコメンテーター
⚫︎NSCアジア上級部長 マシュー・ポッティンジャー 海兵隊出身の学者
⚫︎国家経済会議(NEC)委員長 ゲーリー・コーン ゴールドマンサックス社長兼COO 
⚫︎国家通商会議(NTC)(新設)委員長 ピーター・ナヴァロ カリフォルニア大教授
⚫︎行政管理予算局(OMB)局長 ミック・マルバニー 下院議員(サウスカロライナ州)
⚫︎USTR代表 ロバート・ライトハイザー 元USTR次席代表

(内閣)
⚫︎国務長官 レックス・ティラーソン エクソンモービルの会長兼CEO
⚫︎内務長官 ライアン・ジンキ 下院議員(モンタナ州)
⚫︎労働長官 アンディー・パズダー ファストフード大手CKEレストランツ・ホールディングスのCEO
⚫︎住宅都市開発長官 ベン・カーソン 元神経外科医
⚫︎エネルギー長官 リック・ペリー 前テキサス州知事
⚫︎国土安全保障長官 ジョン・ケリー 海兵隊退役大将
⚫︎環境保護庁(EPA)長官 スコット・プルイット オクラホマ州の司法長官
⚫︎中小企業庁長官 リンダ・マクマホン プロレス団体の共同創業者・元CEO

(その他)
⚫︎駐中国大使 テリー・ブランスタッド アイオワ州知事
⚫︎駐イスラエル大使 デービッド・フリードマン 弁護士

重要なポイントを見ていきましょう。

国務長官

トランプ氏、国務長官にエクソンのティラーソンCEO指名(16年12月17日付ウォールストリートジャーナル)

ようやく最重要ポストの一つである国務長官の指名が決まりました。レックス・ティラーソンは、ロシアと極めて近い関係にあると言われる人物です。

トランプ次期大統領のロシアへの傾倒は、プーチン礼賛、CIAのロシアに対する分析の否定、ロシアが米国に報復しないことに対する賛辞などを見ても分かるとおり、異常なレベルに達しています。このため、米国の指導者層からは、ロシアの調略に対する警戒心が高まっています。

そうした中で、大統領補佐官に就任するマイケル・フリンに続く親ロ派のティラーソンの起用。当然のことながら、上院の承認を得られるのかが問題になります。

上院のコーカスは、共和党52、民主党48(独立系2含む)ですから、民主党コーカスが全員反対し、共和党から3人の議員が反対すれば承認は得られません。そして、すでに、ジョン・マケイン、リンゼー・グラム、マルコ・ルビオの3人が反対を表明しています。

こうなるとティラーソンの就任は難しいかもしれません。もし就任が阻まれると、国務長官という重要ポストが白紙に戻り、トランプ政権の不透明感が続くことになります。

国家通商会議

次に注目されるのは、国家通商会議(NTC)の新設とピーター・ナヴァロの起用。

トランプ氏、新設「国家通商会議」トップに対中強硬派(16年12月22日付BBC)

マクロ経済を度外視し、ミクロ的な貿易不均衡と雇用にこだわるトランプらしい制度設計ですが、注目すべきは事務局長に据えたナヴァロです。ナヴァロは、国際政治学の世界では無名に近い存在でしたが、選挙戦からトランプの外交ブレーンを務めたことで一躍脚光を浴びるに至りました。

その思想の中核は、中国に対する強硬姿勢であり、トランプの考えにマッチしていますが、以下の著書を読むとその思想がよく分かります。​

ピーター・ナヴァロ 『米中もし戦わば』

NTCについては、制度的にUSTRとの調整が気になるところですが、そのUSTRにも対中強硬派のロバート・ライトハイザーを起用。学者のナヴァロが戦略を立て、実務家のライトハイザーが実施する、という布陣のようです。

NSC

FOXのコメンテーター出身者を多数起用しており、経験不足と右翼的な思想傾向に批判が集まっています。もっとも、大統領府の人事は上院の承認を必要としないので、ここはそのまま1月20日の政権発足に伴い自動的に確定します。

その他

駐イスラエル大使に指名されたデービッド・フリードマンは、イスラエルとパレスチナの「二国家解決」という、これまで米国が一貫して掲げてきた外交方針を正面から否定するという超強硬派。ネタニヤフ首相に勝るとも劣らぬハードライナーです。

トランプの中東外交は、極端なまでの親イスラエル、反イランという点において前政権からの政策を一変させる要素をはらんでいます。

全体を貫くトーンは、軍事・実業・金融における米国の強さの強調、親ロシア、反中国、親イスラエル、反イラン。まだまだ予断を許さない状況ですが、おおよその骨格は見えてきたようです。

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4 comments on “トランプ政権人事:国務長官、国家通商会議
  1. JFKD より
    親ロシア・反中国

    ソ連を平和裏に解体し核の後始末もしてやり、G8に加入させた以上、ロシアは脅威ではない。だがユダ金が手に入れたソ連国営企業をプーチンが奪ったので、ウクライナ問題を欧米が仕掛けてプーチンを追い込んだ。
    これに対しユダ金は中国を経営しているので共産党にとても甘い。トランプは親ロシア・反中国でユダ金・奥の院と調整できているのでしょうか。トランプを認めたとすればいよいよ中国共産党も役割を終えるのか。まだまだ米国は中国で食っている気がするが、確かに投資銀行はもう中国の銀行から去っている。トランプと習近平はディ-ルを重ね、結局米中経済同盟を継続するのでは。軍人の閣僚は多いが、中国以外で戦闘するのでは。GSのOB閣僚は今までの対中交易政策を変えざるを得なくなると思う。上院の承認が見ものですね。
    ただ中国はロシア国民と違ってとても平和裏に解体というわけにはいかないのでは。まあ両国とも民主主義とは縁のない国ですが。漢民族の国家も一つという訳にはいかないのでは。こんな中国に残れ残れと、しきりと日本に勧める米国です。

  2. Go Nittany Lions! より
    ティラーソン

    ティラーソン氏は、ロバート・ゲイツ氏の推挙によるものだとすると、ゲイツ氏と米国随一のロシア専門家であるコンドリーザ・ライス氏との関係(つまり、ライス女史が反対しなかったこと)を考えると、それ程心配する人物ではないのでは思うのですが如何でしょうか。ちなみに、ライス女史をロシア大使に任命する可能性はあるのでしょうか。JDさんの見解を伺えるとありがたいです。

  3. カマキリマン より
    関白殿、責任重大。日米首脳会談。

    日米首脳会談の成否、2017年の日本の運勢の吉凶がそこで決まる・・と言っても過言ではないですよね。
    はたして安倍総理はトランプ帝と馬が合うのでしょうか。

    トランプ帝に対して、説教じみた態度でTPPや日米同盟の効用を説くようでは、上手く関係を構築できないのではないかと不安を抱きます。

    「もし、北朝鮮のミサイルが米艦や米軍基地に当たったら、日本は艦を並べて反撃する」という程度のことを明言するのは最低ラインでしょう。

    TPPや自由貿易推進など、「優等生グローバリスト」の顔をしているようだと、
    「これから管理貿易をするって言ってんだから、もっと本音で喋れよ」と、トランプ帝はお気に召さないかも。

    TPPなんぞ「トランプ帝との良好な関係を構築すること」に比べれば優先順位は低いはず。
    関白殿そのあたりの読み違えなきようにと願うところです。

    むしろ「日米ビジネス関係者500人を引き連れていく」ぐらいがちょうどいいのでは。

  4. Kosei より
    米中もし戦わば

    米国の冷徹な視線を感じました。こんな研究を淡々と
    している人がいるんですね。で、いつのまにか表舞台
    に出てくるところに米国の怖さを感じます。

    今のところジョージ・フリードマンと合わせて、なんと
    なくトランプの考えてることが見えてきた気がします。
    勘違いかもしれませんが。

    読書量・読書力も能力のひとつですよね、、。

    今後ともお勧め本、コメントなくてもいいので挙げて
    おいていただければ有難いです。

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