プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2005/10/11 09:19  | 金融全般 |  コメント(5)

ゾンビ法案


休日のダイエットねたは意外な反響を頂きました。ドクター青木、ご協力痛い見入りまする。 当方の体脂肪率に関して、もっとでぶだと思ってました・・・というコメントが多く寄せられ、いやー、まあ・・・であります。


さて、先週こちらで注目と申し上げていたデルファイ社は早くもチャプター11を申請。こちらの読者の方にはもう、おなじみの法律ですね。倒産なんですが、ゾンビとして生き残る法律です。


生き残る条件としては、今抱えている債務の返済を免除すればかなりの確立で再生が見込めること、債務の踏み倒しに対して相応の情状酌量の余地が認められること、などが上げられるため、裁判所が介入して、それこそ経営者の使い込みがないかどうかなど、かなり厳正に調査されます。


今回これがGM問題に直結する・・・と申し上げたのはGMがデルファイに出していた万が一何かあったときには面倒をみます(昔は親会社でした)という一筆。裁判所がこれをどう判断するのか、極めて注目される訳です。現在の各人の主張をまとめると・・・


 デルファイ社及びその従業員
だいたいGMの車が売れないからそのしわよせでこっちが倒産したんじゃないか!。もっと早くトヨタアメリカの下請けになっていればよかったぜ。(なれたかどうかは別ですが、トヨタも10人以上のエンジニアを送り込み支援していたのです・・なんで、新聞は書かないのか??ですが)
だから、当然約束どおり、金融支援及び年金などは満額払ってもらいましょう!!

GMの主張
お前等がとんでもない欠品率で部品を納めてくるから、原価率がトヨタの1.5倍なんて状態で、こっちも利益が圧迫されて苦しいんだぜ。
だいたい、お前達が、子会社の分際でこんな豊満な年金支払いを約束するから業績が悪くなるんであって、それがリーズナブルな範囲(例えば3分の1)に減額されるまで、GMとしては払う筋合いはない!!。だいたい、ここでそれを負担したらこっちまで潰れちゃって、株主に訴えられたら大変なんだから!人のことまで心配してられん、ちゅーの!!


 裁判所の影の声
まいったなー、おい・・・
いくら一筆があるからって全部GMにかぶせて、もし、GMが倒産したら、えらいこってすぜー。アメリカの伝統をぶち壊したなんてあとあと言われたらどうします??
あんた、明日から生きていけないかもしれまへんなー。
しかもデルファイの11申請を安易に認めたら、おそらく何十社というGM関連の予備軍、下手をするとフォードの子会社連中も次から次へと申請してくるんちゃいますか?焼け太りでっせ。
 かといって、年金を3分の1にも減額して、全米最強のUAW(自動車労働組合)に暴動おこされても、困りますしねー、難儀な事ですわ・・・


などと、各人各様に悩ましい事態なのです。特にGMは微妙で、GMの従業員もデルファイの従業員も同じUAWに所属している為、ここで間違えると肝心の自分達の社員との交渉が暗礁に乗り上げる可能性もある一方、自分達の従業員に甘い誘いをして、デルファイと分断するなんていう、あこぎなことも考えるでしょう。


 事ほど左様に今回は事態が入り組んでおり、こういう事例はアメリカにも過去にないので大変注目される事になります。
日本も産業再生法というゾンビ法案があるので、どういう結論がでるにせよ、日本の今後のモデルケースにもなるでしょう。アメリカの良いところは、こういう交渉ごと、駆け引きなどが、相当の部分裁判所によりオープンにされる事です。日本では殆どが密室なので、こういう所がオープンにされることこそアメリカの資本主義の真骨頂だと思われますので、今後とも是非注目して追いかけて見てください。


 こうなると、トヨタによる富士重工株のGMからの購入もなぜ、今だったからよーくわかりますよね。ただ、救済という言葉を使わせないぞ!! というトヨタ首脳の強行な姿勢には笑えました。三河商人ここにありですな。


 日本株についてはこうなると、もう、みなさんご存知のように「現金化」が当面のテーマになるということになります。 では!

メルマガの申し込みにはご登録のお手続きが必要です。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

5 comments on “ゾンビ法案
  1. 金融めも より
    どうなるんでしょうね

    アメリカは日本と違って、申し立て即日手続の開始なので、裁判所としても「この案件を法的手続として認めるかどうか」の裁量を働かせる余地はないんですよね。この点、日本の民事再生法が曲がりなりにも裁判所の判断を経て手続開始となるのとは違います(もっとも、民再も昨今では即時開始に近い例もあるようですが)。
    今後は、まさにぐっちさんおっしゃるとおりの悩みをそれぞれの陣営が抱えて突き進むことになるんでしょうね。特に注目したいのはUAWどうするってことでしょうか。そして、UAWだけではなく、すべてのレガシー産業でペンション債務の破綻が表に出てきたら...。
    アメリカンICONとしてのGM破綻は、そうはいっても可能性を減じて考えていたのですが、やっぱりやばいかなあと思い始めています。並み居る投資銀行のクレジットアナリストも、アリバイ作りもあるのか、これまでそうしていなかった人たちがばんばんGMをUNDERWEIGHTに変更しています。何をいまさら、という気もしなくはありませんが...。これもご指摘のとおりですが、今後は裁判所のファイリング文書から目が話せません。全部がガラス張り公開になる手続なので、勉強したいと思います。

  2. バッファロー66大尉 より
    驚きました。

    何に驚いたって、本日の日経平均です。
    前場がプラスで引けただけで驚きなのに、この終値は。。。
    パ印にまたがる地震も影響して「消去法で日本」となったとか。
    まさかねえ。

  3. ひー より
    教えて下さい

    DPHの債券が58?59$で下げ止まって取り引されているのは不思議でなりません。GM(HGM等)もしくはGMAC売りでDPH買いなどのポジションを取る投資家が多数居るのでしょうか?
    日本人ならGM売りのトヨタ、日産買いぐらいしか思いつかないです。

  4. 金融めも より
    Unknown

    クレデリ市場を見ても、回収率を6割前後と見込んでいるようですね。したがって、58セント=回収率の現在価値 という評価です。

  5. ぐっちー より
    たすかります・・・

    金融メモさま
    ここはお任せしておいた方がよろしいですね(笑)。おっしゃるとおりガラス張りになるところがやっぱりアメリカ、ですね。私も固唾を飲んで見守っております。(とかいって結構GMのポジションをもってたりする・・爆)

    バッファロー66大尉さま
    私もおどろいてます。でも結局逃げ遅れる日本の投資家という構図は変わって無いみたいだけど・・・

    ひーさん
    金融メモさまのコメントどおりです。今日の書き込みにも書いたのですが、日本ですとぎりぎりまで粘りに粘って倒産するので回収率6割なんてのは考えられないんですが、アメリカでは回収率をかなり残してやり直しをはかる・・その方が次のファイナンスが付き易いなどのメリットがある、という事例がたくさんあります。結局その方が安く上がる、訳です。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。